2023年3月19日日曜日

2023/3/19 毛無山(1回生山行)

日時:3月19日

メンバー:CL有間、SL鈴木、奥津、高林

行程:
19日:静岡=朝霧高原-端足峠-雨ヶ岳-大見岳-毛無山-朝霧高原=静岡

記録:
今回の山行は1回生だけで行う山行であった。やりたいという話は前から出ていたが各々の都合などもありこのタイミングで行うこととなった。他の記録などを参考にしながら自分たちのレベルで行くことが出来、なおかつ登りがいのある山にしたいという考えのもとで毛無山が選出された。


これからは運転要員になるから寝てられなくなっちゃうのかな

計画段階から予想できていたことだが、案の定空模様は微妙である。雨でないだけましだがこのままだと頂上から展望は望めないかも…といった感じだ。

割と仲の良いこの代である

平坦な自然歩道が終わりいよいよ登山開始である。貯水池を過ぎ少しずつ傾斜がきつくなっていく、、、の前にいきなり道迷いが発覚した。まだ歩き始めて10分も経っていない、、、原因は分岐に差し掛かった際にコンパスの向きの確認をしっかりと行いきれなかったこと、そして何も考えずに前の人についていってしまったことにあるだろう。引き返すか悩んだが現在地がはっきりと分かっていること、そして確実に登山道と合流できることから強引に復帰することとした。


登山道への復帰を急ぐ

無事に復帰できたがいきなり猛省すべき点が出来てしまったスタートとなった。

今回のSLは鈴木である。序盤からかなりのペースで進んでいく。進んでいく。進んでいく。…前を歩いていた高林と目が合った。丸1年の付き合いだ、お互いの考えは言わなくても分かる。「え、マジか」「早くね」「鈴木にペース落としてとはいえない」「マジでやべぇ」、、、。人のことをとやかく言うことではないかもしれないが、この1年間で一番成長したのは間違いなく鈴木だと(多分みんなが)思っている(はず)。

かなりのペースで進むSL鈴木、続く高林

端足峠まではほんと順調である。ペースも非常に良く、コースタイムをかなり巻きながら進むことが出来ている。

楽しんでおります

天気は微妙である

傾斜が緩やかな箇所を超えた1500mを超えたあたりから凍ってる箇所が目立つようになってきた。今回の山行における一番の懸念点はこの凍結である。アイゼンを付けるかどうかとこの先の展開について予測しつつ歩を進める。
 余談だが、ここでの上りでじいちゃんばあちゃんを追い越した。かなりのご高齢カップル(のように)見えたが、今回の山行では今後も登場することとなる。

晴れ間が見えた(時もあった)
富士山が見える(心の綺麗な人には

何事もなく雨ヶ岳をとれた。案の定?景色は良くない。ここでペースも悪くなかったことから普通に休憩を取った。その最中、先ほどのじいちゃんばあちゃんが目の前を通過。ほんの一瞬の休憩を挟み、僕たちよりも先に動き出す。

ちらほら雪が

歩き始めてすぐにじいちゃんばあちゃんに追いつき、ごめんねぇって言われながら先を譲って良いただいた。登山をしていて割とよくあることだが同じ人を抜いたり抜かしたりを繰り返すのはあまり好きではない。(個人的に)

もう手慣れたものです

ちらほらと凍っている箇所が目立ち始めすれ得違う人たちの足にはチェーンスパイクが。
出来れば使う機会がないことを祈っていたがそうもいかず、アイゼンを装着。少し判断が遅く着けにくい場所での作業となってしまった。で、手間取ってる間にまたまたじいちゃんばあちゃんと遭遇。道の譲り合いになったが、すぐには付け終わらなかったことから先に行っていただいた。

これで3月中旬です
余談だが、毛無の山頂までの間に再びじいちゃんばあちゃんを追い抜いた。度々すみませんでした。
......休憩時間を長く取ると次の動き出しが地味にきつく感じることがある。じいちゃんばあちゃんにならって、ちょうど良いペースで歩き続けて休憩時間を短くしていくのも正解の1つかも?と勝手に感じていた。

まだまだ余裕の表情

あとは天気さえ、、、

ちゃんと食べます
みんな大好きお団子標識
相変わらずの良い笑顔

毛無の山頂を取った後、アイゼンをどうするか話し合った。この後は標高を下げて行くだけだがどのくらい積もっているか分からないため近くの展望台まで様子をみようということになった。この判断が良かったのかは分からない。
その後下りに入ってから、展望台の手前で鈴木がアイゼンを引っかけて転倒。山頂を出てから雪も見当たらずアイゼン外してても良かったかもしれない。判断することの難しさを感じた瞬間だった。

倒れ込む鈴木、助ける高林(気にせず写真を撮る奥津)

アクシデントはあったものの、その後は順調に下山していく。

名前の由来について考える


某高校伝統のヘリポートでの腕立せ伏せ

やれやれ

鈴木の転倒以外には特にこれといったこともなく順調に下山。景色こそ見れなかったものの1回生だけで楽しく行ってこれた。

まとめ:
山岳部に入部して1年が経つ前に1回生だけでの山行を行うことができて良かった。先輩方がいないことで自分たちで全ての判断を行う必要性があり、来年度上級生になったときに向けた課題も確認することができた。天気こそ悪かったものの非常に充実したものであった。

気が付けば入部してもう1年である。山行中もその話題で持ちきりだった。楽しかった山、きつかった山、来年度入ってくる部員の数や男女比、等々。もう次の年度になり、上級生となる。頑張っていくぞ。

(文:奥津)



2023年3月5日日曜日

2023/03/02~05 【個人山行】積雪期白峰三山 + 白峰南嶺北部縦走

日時:03月02日(金)~03月05日(日)

メンバー: 蓮容

行程:
2日:静岡=奈良田(19:00)-第一発電所ゲート(19:38)-あるき沢橋(22:00)-
      池山御池小屋(3日1:00)
3日:池山御池小屋(7:30)-城峰(8:50)-ボーコン沢の頭(11:40)-八本歯ノコル(12:40)-
      吊尾根分岐(14:20) -北岳(14:50)-吊尾根分岐-北岳山荘(16:00)
4日:北岳山荘(6:10)-中白根山(7:00)-間ノ岳(8:00)-農鳥小屋(9:00)-西農鳥岳(10:14)
  -農鳥岳(10:57)-大門沢下降点(11:50)-広河内岳(12:23)-大籠岳(13:38) -
      白河内岳(14:12)-笹山南峰(16:00)
5日:笹山南峰(6:30)-奈良田(8:48)=静岡



4年間の活動の締めくくりとして、冬季(春季?)の白峰三山と笹山までの南嶺縦走を計画しました。池山吊尾根から白峰三山を縦走し、最後に笹山までのなだらかな稜線を辿るルートを取ります。

白河内岳を過ぎたあたりまでは前後に誰もおらず、前日の降雪のためか基本的にトレースは無く、ラッセルもルーファイも存分に楽しむことができました。天気も帰りの運転を除けば!4日通じてよく、非常に恵まれた山行で4年間の決算を終えられたと思います。

ダイレクト尾根は難易度は低いものの(むしろ大門沢使うより容易?)、白峰三山の下降に利用している記録は少ないため細かく記録しようと思います。


記録:
2日
今回の計画は奈良田から開運隧道を通る所から始まるが、今はリニア工事の関係で昼間は侵入ができないらしい。そのため、工事の時間を避けて林道を歩く必要があるが、2日の午前は雨、5日は天気がどうなるか微妙。そのため3~4日の稜線突破を目論み、2日夜というなんとも言えない時間に登りはじめることにした。

卒論の修正やら、入学手続きやらの書類を準備しながら忙しく昼間を過ごし、16時に自宅を出る。
愛車のおんぼろカブ50に跨りいつもの道を走って19時ごろに奈良田着。
予備日含め5日分の荷物を背負っての長い林道歩きがはじまる。

今朝まで雪が降っていたのと、少し前に大門沢で大規模な雪崩があったためか、駐車場に車両は一台もなかった。白峰三山の独占に期待が高まる。。。。

開運隧道 北岳登山 玄関
開け方…?なんのことやら。。。


道中は、深い早川の谷を横にし、長い真っ暗なトンネルを黙々と歩く。昔は暗闇が怖かったものだが、山に入るようになってすっかり慣れてしまった。ただ、怖さは感じない代わりになんだか無性に寂しかった。単調な林道歩きがいろいろ考える余裕になるのかなんなのか、理由は分からなかったがあるき沢橋までの約3時間は、なんだか耐え難い寂しさを味わいながら歩いていた。

22時にあるき沢橋に。そこで泊まるか悩んだが、明日は少しでも余裕をもって八本歯ノコルに挑みたい。池山御池小屋までの1000m弱を進む決意を固める。
しかし、かなりの急登に荷物の重さ、そしてヘッテンでのルーファイに睡眠不足が加わり体力・精神共に消耗した。おかげでもう寂しさを感じる無くなったが。
踏み跡は一部不明瞭で途中から雪に埋もれてなくなる。暗闇でテープを見失うこともあったため、基本的には地形図を見ながら歩きやすい所を適当に進んだ。
途中で急坂がガチガチに凍りだしたためアイゼンを付けた。夜間・早朝に歩く場合はご注意を。

1時に小屋に着。想定よりずっと辛かった。


道中に新しそうなトレースが見られなかったことから、先行者はいないかもしれないとは考えていたが、小屋に誰もいないことでよりその確信が強まった。嬉しいやら心細いやら。
一刻も早く寝てしまいたかったが、辛うじておにぎりをフリーズドライの味噌汁で流し込む。明日の行程での消耗も鑑みて遅めの時間にアラームをセットした後の記憶はない。

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3日
6時に起床。マルタイ棒ラーメンを食べるが、朝からは味が濃く辛かった。
次は薄めに作ろう。
アイゼン、ワカンをこの時点で装備し出発する。

お世話になりました。


小屋からはやはり足跡はない。うっすらとトレースらしき窪み?を辿っていたが、これらも木曜の雪でほとんど埋まってしまっていたようだ。
歩き始めの方は、基本はなんとかなる程度の雪ではあったが、城峰手前の急登などでは雪が柔らかく、このような箇所ではラッセルに非常に苦労した。

先行者なし




こんなラッセルも。。。消耗が激しい


消耗を抑えるためゆっくりと進んでいたつもりではあったが、それでもいつもと違い先頭の交代要員がいないことで疲労が溜まる。荷物も重い。昨晩の睡眠不足も効いている。

城峰を過ぎて進むと視界が開けたが、消耗が激しくペースがあがらない。
また、八本歯ノコルすら前なのに西農鳥手前の登りが目に入り、そっちが気になってしまう。遠目からはあきらかに急で、どのように登れるのか想像がつかなかった。しかし、本日の核心すら終わってないと思い直し、まずは目先に集中しないとならないな、と切り替え歩く。

樹林を抜けてからの雪はよく締まっており歩きやすくなったが、ボーコン沢の頭についたのは想定から大きく遅れた12時前であった。


雪の白峰三山稜線
明日歩く稜線。遠めからでも西農鳥岳直下は威圧感がある


とか考える前に足を動かさねば


冬の北岳バットレス
バットレスはさすがの迫力



ボーコン沢の頭から八本歯ノコルまでは歩きやすく、大迫力の北岳へ近づいていくのが良くわかる幸せな時間であった。
八本歯ノコルは、最初は大樺沢方面に巻くように下る。おそらく核心となる部分は一応ロープは出ていた。しかし朽ちたトラロープであったため、これには触れずに慎重にクライムダウンした。降りた先もリッジとなっており緊張は続く。ピッケルで足場を作りながら慎重に進んだ。梯子は、八本歯ノ頭側のものは出ていたが北岳側は埋まってしまって、手すりのみとなっていた。

八本歯ノコルへ向かう


八本歯ノコル、到着
初手は右から巻くように降りた


下から見たもの。大樺沢方面から巻き降りた。


続いての下降が核心?その先は、まだ踏まれていない綺麗なリッジ!(嬉)


一応、ほっそいロープは出てました。


中央を素直に降りました


ライチョウに癒され


八本歯を振り返る




八本歯ノコルは確かに丁寧さは要したが、条件は悪くなく雪も適度に締まっており無事通過。
そこから吊尾根分岐までは斜度があるクラストした斜面を登って行く。一部、アイゼンの前爪とピックを刺して登る場面があり、この荷物を背負っていては休憩もできない。溜まっている疲労もあってなかなかにしんどく緊張。

このあたりで、本当になんでこんな辛いことわざわざやってんだ?
という思いがむくむくと湧き上がってきた。

なんとも、まあ懐かしい。

非常に懐かしいのこの感情、初めて本格的に味わったのは山を初めて半年も経たない1年夏の山行、やはり白峰三山縦走であった。それ以降は楽しさや必死さ、人より体力がついたことで、(あるいは脳死で歩くことを覚え)ほとんど忘れていた感覚だったが...。あれは当時の自分にとって本当にきつかったなぁ、ということを思い出した。

1時間ほどで吊り尾根分岐へ。北岳へは、夏道をたどって雪面を登るか、岩の稜線を登るか。
今回は、雪面の急登やトラバースを嫌って上り下りともに稜線の岩場を辿った。

漸く分岐へ


稜線の岩を進む



振り返ると、明日進む稜線




なんとか15時前には北岳への登頂に成功。
睡眠不足などで溜まりまくった疲労と、時間も押していたためそんなにゆっくりする気が起きなかったのは勿体なかった。写真だけ納めて北岳山荘へ向かう。

山荘へは、概ね夏道を通る。もし滑っしまうと野呂川まで転げ落ちるので、岩を掴みながら丁寧にトラバース。悪そうなところでは、あえて岩場に逃げるルーファイも。

甲斐駒の後ろには八ヶ岳


仙丈ケ岳


基本夏道(の跡)を歩く。


北岳山荘へは16時。問題なく中に入れてもらえた。
暖かくきれいで、大変ありがたい。
夕飯にはショートパスタと粉末スープ、煮豆とベーコンでスープパスタを作る。

また、持ってきた水はここで尽きたので以降は雪から水を作る。残りの行程ではかなりの水を作って飲んだが、どれも汚れのないうまい水だった。

除雪の必要なく、ありがたい


今夜も独りで気楽に過ごす
窓からは富士山が見えた


ペンネ150g、こいつに後々苦しめられる


「水分はどんなに摂っても摂りすぎるということはない」
のでいっぱい作る飲む



北岳のアーベントロート


大変な一日だった


北岳の夕日を眺めた後に夕飯を食べはじめるが、疲れた体にペンネ150gは強烈であったようだ....。
途中で吐き気すら覚えるが、残すと翌朝にはかつては食べ物であったどうしようもなくひどい氷塊ができあがるし、カロリーを少なくとも計算分は取らなければ回復にも響く。
白湯を飲んだり、温めなおしたり、時折睨めっこしたりしながら...。少しづつ減らしていく。途中でペンネからの逃避のためトイレ兼散歩で外に出たら、甲府盆地の明かりが綺麗に見えた。

夜は時折風音が聞こえるものの小屋内は暖かく、快適。
あまり記録では見かけなかったが、中白峰への登りが急で悪そうだったため、明るくなってから行動しようと4時半までゆっくり寝ることとする。

一度喉が渇いたため、練乳を湯に溶かしホットミルクにして飲んだ以外はほとんど起きることなく、すっきりと朝を迎えた。

@先輩方 いつかもこんなこと、ありましたねぇ...


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4日
ゆっくり休めたことで体は快調。無理やりパスタを詰め込んだ甲斐もあった。
アイゼンをボルダリングジムで培ったできうる限りの力で締め込み、出発。

前日は中白峰の登りが悪そうに見えたが...。とりあえず近づいてみなければ。
実際の所、固く締まった急斜面で少し緊張はしたが、丁寧にアイゼンの前爪を蹴りこむことを意識し、確実にピックを打ち付け一気に登った。ここがあまり記録にないのはこの時は不思議であった。ルートが間違っていたのか、この先の西農鳥の登りが悪くこんな所は霞んでしまうのか...。

そこから間ノ岳へは、ここまで来た人にとっては気持ちよく歩けると思う。

朝 睡眠不足も解消


正面:中白峰岳 遠目には悪そう


矢印の辺り、岩の間を登った


中白峰到着 ここから間ノ岳までの登りは緩く気持ちが良い。


白峰三山、富士山の写真に侵食されがち


間ノ岳 弘法小屋尾根も、いつかやりたい


ここから農鳥小屋までの下りも概ね夏道を辿った。

途中で広い斜面を下る部分が出てくる。固い雪の上にサラサラの雪がのっており、いやらしかったのでバックステップも交えながら丁寧に下る。このあたりは先を見据えてルーファイしないと、吹き溜まりに降りすぎたり長いトラバースになったりと面倒になりそうな場所であったので、地味に要注意。

下ってきた跡を見上げる
この斜面は滑落・ルーファイともに注意


この時期の名物?埋没した農鳥小屋へは順調に到着。
本計画のビバーク候補地の一つで、万が一の時はここに雪洞を掘ることを考えていたが、本日はその必要はなさそうだ。

ここからの登りが核心であるため、大休止を取りアイゼンも装着チェックをし、ベルトを親の敵とでもいうように締めなおす。
西農鳥への登りは見るからに急で、ここからではどういくかの判断が付かない。おおよその目星だけつけて稜線上を進む。

農鳥小屋は埋まっていた。


黄色→:夏道 赤→:稜線上
とりあえず近づいてみる


近づくために核心の下部まで上るが、ここは中白峰の上りより急で長い斜面であった。集中して一気に登る。中白峰の上り、あの程度の上りではわざわざ記録には書かない、ということだったか。

近づいたところ、核心部はだいたい目星をつけた通りになっていた。

岩か


トラバースか


トラバースは斜度があり、悪そうだったので岩を選択。このあたりの判断は状況や人によって様々だと感じた。
荷物が重いのでバランスを崩さないように、ピッケルを雪や岩にかけ、空いた手で岩を掴み、基本中の基本である3点支持で慎重に登る。

安定した場所から振り返る
上った先も急な雪面で、気が抜けなかった


核心を超えた西農鳥から見るパノラマは、歩いてきた稜線や進む稜線、仙丈ケ岳、塩見岳などなど、北ア、中央アを一望でき、それまでの緊張もあってとても印象的。
1年の時も、しんどい思いしてなにやってんだか、と思っていても、上での景色に感動してしまってなんだかんだ山を続けてしまった。そんなことを4年にもなって思い出させられたのは、なんだか悔しかった。

西農鳥岳から農鳥岳へは雪に覆われていた夏道をトラバース。アイゼンを利かせながら、事故は核心を過ぎてから起こる、と自分に言い聞かせながら進む。

農鳥岳からは夏道は完全に埋没しており、稜線を辿る。ここから大門沢までアイゼンの跡が薄く残っており、踏み抜きを避けることができて助かった。

なんだかここでの景色は特別だったので、あえて詳しくは割愛


夏道を辿る




大唐松尾根
夏に藪の海で泳いだことを思い出す。あれは楽しかった。


夏道は完全に埋没
稜線を辿る


11:50大門沢下降点。もうデザートたる笹山までの縦走を残すのみ。
この地点では体力も余裕があり、今日中の下山も考え始めていた。

ここからは特に難所はなく、お気に入りの道である。
一方、白峰三山をやる人はほとんど大門沢を利用する。
自分は雪崩が恐ろしい大門沢をわざわざ下る気はしないが...。
白峰三山の難易度を求める人にとっては興味がわかず、それならさっさと降りてしまうかとでも言うような、退屈な道で蛇足と思われているのかもしれない。
それよりラッセルや雪崩リスクがある大門沢が白峰三山にはよりふさわしいということなのだろうか。
ちなみに、本山行の10日ほど前?に大規模な雪崩で登山道が埋まり、下降路としての状況はよくなかったらしい。
しかしそんなことは関係なく、もとより自分は少しでも長く縦走の余韻に浸っていたかったため、計画段階から笹山を目指していた。

 今日は下降点すら風が弱く、優しい天気


少し上り


あとはもうデザート


とはいいつつも、広河内からの下りは適当にやると谷底へ高速輸送される。
今日何回目になるかも分からないが、油断したら事故るぞ、と呟きながら下る。

下り終わったのちは、夏道も多く出ており、アイゼンの歯を消耗しながら縦走。



思い出の木(小声)
大籠手前の小さなコルで、本山行のビバーク候補地


大籠岳と富士山


白河内岳までは特に危険もなく、快適かつ順調に進む。15時過ぎには笹山につけるだろうか。
そして、白河内岳からの下りで、白河内へ登って行く本山行初めて他の登山者と出会った!
急に核心を終えた実感が出てきて、すごく安心をした。
大柄でもない女性であったが、笹山ダイレクト尾根を独りでラッセルしテントをデポして、そのあとのちょっとをお散歩してきたらしい。強い。
そして、このあとさらにこの女性の強さと、ありがたさを実感することになる。

白河内まで一気に
アイゼンが削れる削れる


そう、ここにきてラッセルが始まったのだ。

正直、多少のラッセルがこの区間にあることは予想していたが、もう本山行は終わったものとして油断していた。
先の女性のトレースこそ存在したが、重量差から腰まで踏み抜くこともあり、閉口。いや、ずっと息を切らして開口していたか。
さすがに縦走の疲労も現れ始め、想定をどんどん遅れていくが進むしかない。こんな樹林でビバークしてたまるか。
最後にこんな思いをするとは思わなかった。

トレースは夏道とは違い、稜線を辿って的確につけられていた。
これがなかったら、下手すれば笹山につくのは日没間際になっていたかもしれない...。ちなみに、全てツボ足でラッセルしてあった。強い。
本当にありがとうございました。

あ、あと少し...


笹山には16時着!最後にこんな目にあうとは...。

とはいっても、まだなんとか今から下れば、最後こそヘッテン行動になっても今日中には帰ることができるだろう。

さて、レーションでも齧って景色も見納めるか。

見納めるかー


かーー...


.................

・・・・・・・・



【速報】下山中止!下山中止!下山中止!


・疲れた
・夕日見たい
・朝日みたい
・飯もいっぱい余ってる
・どうせ温泉も閉まってる

以上。

そうと決まればさっさとツェルトを設営する。
南峰の樹木を利用し、ロケーションの良い場所を選ぶ。
本山行は小屋を利用できるうえ、もしビバークするとしたら樹林帯に逃げ込むか雪を掘るかを想定していたため、軽量化のためツェルトを利用した。事前にすぐ張れるように準備をしておくことで、木があれば容易に設営可能。そうでなくとも泊まり方は様々。
ツェルトは工夫の余地が大きく、楽しい。いろいろな細かいコツがあるのだが、それだけで結構な文量になると思う。自分もまだまだ経験は浅く、機会があれば部内で共有と研究をしたい。

縦走の最後の一夜を茶などを飲んでゆっくりと過ごす。
今回は軽量化のため酒は持ってこなかったが、不思議と飲みたいとは考えなかった。

無駄泊


稜線が月に照らされ、綺麗だった(スマホ品質!)


夜起きると月暈 幸運の兆しか、雨のしらせか
...私の場合後者だろうなぁ.........................


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5日
急いで起きる理由もないが、長く寝すぎるのもそれはそれで...。
朝日を見ながら出発できるように起床する。

外には雲海が広がっており、最終日には今までの行程とはまた違う、幻想的な朝を味わわせていただいた。

雲海と富士山、日の出



そして、出発の時を迎える。
ちなみに、昨日のトレース主も南峰付近に泊まられていたが、設営・撤退共に素早かった。

そして笹山の山頂に漢独り、やることは決まっている。
そう、アレがはじまるのである。

今するなんの生産性も必要性も存在しないが、やるものはやるのだ。

訓練された我らが部員は、もう察しているだろう。

そう、ダイレクト尾根下山RTA、開始


出発時に写真を撮影し、スタート。
因みにどれだけ早く降りようと温泉は10:00まで開かない。
コンビニすらも遠いため、いかなる下界飯にありつける訳でもなし。
なにもメリットなどないが、そういう問題ではない。
もっと根本的ななにかによって引き起こされる衝動だ。

途中で昨日のトレース主に追いつき、トレースのお礼を伝えた。
わかんも持っていらしたが、足跡を見るに上りもすべてツボ足だったようだ。
やはりお強い。

2000m付近から凍結が激しく、丁寧に降りざるを得なかったが、水場入り口付近からはそれもほとんどなくなった。

凍った森が綺麗で、一瞬立ち止まる(タイムロス)


雪は水場入り口上あたりから



橋を走るのはマナー違反
ここでゴールとした

TIME:2時間17分 
風呂が開くまで1時間

・・・


最後のRTAは知らないが、4日間は最高の天気のもと白峰の山々にじっくり浸ることができ、本当に幸せな時間であったと思う。
(参考:今年度実績:22戦 6勝☀ 3分☁ 13負☂🌀

その後は、4日間でベルト穴1つ分失ってしまった栄養をおきらく亭で補充。
行きとは違って明るい帰路についた。

えび天そば定食、なんとこれで1100円 
喫煙OKなので苦手な人は注意
自分は吸わないが、一人の時は気にしないので個人山行の帰りにはよくここで食べる。
上記のことが気にならない人にはめちゃおすすめです。









ちなみに、ちゃんと帰宅途中には雨に降られたとさ!!!


まとめ:

初めての白峰三山は1年の8月、夏合宿を前に練習で登りました。これが人生初の縦走となったわけでしたが、先輩の目論見通りか縦走のキツさと共に、白峰三山の雄大な景色を深く刻み込まれたのを覚えています。

笹山は、先輩から主将を引き継いだ2年の終わり、先輩抜きでリーダーとして部を率いていく際に初めて行く山として選んだもので、その時に笹山と白峰三山を繋ぐ稜線を歩く計画を立てていたと思います。

それ以降も半年に一回程度はこの山域を訪れ、1年の時から思い入れがある山だからこそ、学部の最後は白峰三山を登りたいと思い、計画を立てました。

4年間の活動は、部の運営も個人の成長も全く思ったようにはいかず、後悔も悔しさも多いものでした。山岳部の先輩方を見ていると、まだまだ全然知らないこと、できないことだらけで情けないですが、しかし、本山行は自分の現状ではいろいろな面でベストであったものだと思います。現状の自分にできるベストはこんなものですが、なんとか4年間の活動に一つ感情の区切りをつけることができてよかったです。

本山行を経て、なにかが劇的に変わることはありませんが、新鮮な気持ちもまた思い出すことができました。今後も初心を忘れず幅広く、かつより深く遊んでいけたらと思います。
(文:蓮容)