メンバー:CL高田(OB),SL蓮容
行程:
22日 静岡=千頭駅=取水堰堤ー八丁暗見ー幕営適地
23日 幕営適地ー曲り淵ー竜言淵ー竜神ノ瀬戸ーこっぱ沢出合(幕営)
24日 こっぱ沢出合ー栗代林道ー奥泉駅=千頭駅=静岡
記録:
5月末、高田さんから「沢行くか!」とのラインをいただいた。
当時の私は、日々上がっていく気温から、のんきに「泳ぎたいですね~」などとのたまっていた。
与えられた選択肢は、逆河内、赤石、栗代川の3つ。
栗代川は調べた限り、豊富な水量を誇り、気持ちよさそう。その上近年は多くの淵が埋まって遡行も容易なようである。(なぜだか個々ここ2~3年の記録がないとは思いつつ。)情けないと思われた方もいるかも知れないが、実は私はずっと天候や先輩の下痢などでタイミングを逃し、沢泊をするのが初めてで、そんな目論見もあって「栗代川いいですね~」とかなんとか言ったのだろう。
命を燃やす(流す?)3日間は、こうして開催が決定した。
22日
高田さんの愛車、車中泊ホテルCRVくんが長年の酷使からついに寿命を迎えてしまったらしい。そのため高田さんは電車で、私は原付で千頭駅に向かうが、倒木で電車が止まってしまったらしい。
...なにやらこのあたりからすでに不穏な気配を感じる。
それでも、大井川鉄道の方々はこのような事態には慣れているのであろう。あっという間に撤去、運行が再開したようで、8時過ぎには久しぶりの高田さんを拝むことができた。
千頭駅からはタクシーで行けるところまでいってもらい、林道に入って歩くこと1時間半で堰堤巡視路(入渓地点)に至る。
入渓地点までに1箇所大規模な崩壊地はあるものの、巻き道や河床までの巡視路が付けられており、快適。因みに入渓地点は帰りには大高巻きしなければならない崩壊地の手前である。
堰堤は入渓地点からすぐの所にある。随分と立派な施設であった。
しばらくは困難な場所はない。一応、いつもは水に飛び込んで進む場所も自粛し温存するが、そんな必要ないんじゃないだろうか。
しかし、高田さんはどこか憐れなものを見る目でにこにこしている。...温存を続ける。
そして、核心1つ目は唐突に現れた。以前の記録では土砂で埋まって歩いて通過できたらしいが、もう完全にそれらは除去され、足の付かない激流が待ち構えている。はじめは右岸からへつるもホールドがなく、結局ガチ泳ぎ。私はヘトヘトになるまでトライするも、リタイア。高田さんも数トライした後、巻く判断を下すほどの激流。
左岸から巻くこととするが、なかなか進めそうな場所がない。しかも急斜面かつもろい。残基を削りながら数ピッチ上がるも巻きすら許してもらえず、下降。ここで、ロープワークに関して何点かご指導をいただいた。まだまだロープワークの技術が未熟であることを再認識し、自分での勉強と今の4回生に方々にも教えていただかないとならないことが多数あることを認識した。先輩方、よろしくお願いします。
あと数トライして突破できなかったら適当に焚き火して帰ろうかとか、諦めに近い空気。
しかし、やはり高田さんは強かった!
流れの緩い左岸を進み、壁を蹴って流心を突破、そのまま右岸へ抜けていった。
こうして2日目以降の継続が決まってしまった無事可能となった。
その後は癒やしの渓相へ。水量も流れもあるがさっきほどのものはない。ただ、八丁暗見の疲れと時間も遅くなっていることもありユズリハ沢が合流した少し先あたりで幕営。
ここで幕営しろ!といわんばかりの平らで小高い適地であった。沢泊は初めてであったが、こんな地形が用意されていることに驚いた。
木も葉も湿っていたがなんとか火を起こし、大量のウィンナーを炙る。
今回食担をしたが、飯には高田さんもにっこりだったので良かった。
疲れもあってかよく眠れた。
23日
よく食べよく寝たおかげか、すっきりとした目覚め。
昨日の八丁暗見の難易度を踏まえた上で、竜神の瀬戸を控えていることを考えると呆然とするが、行くしかないのでひとまず忘れて道中を楽しむこととする。
ラーメンをすすり出発する。
流れはそれほど強くなく、気持ちよく突破。当然倒木からは飛び込んでおく。
ここも泳ぐ必要があるほどの水位はあったが、写真左側は流れもほぼなく容易に突破可能。
真ん中の凹状を登る。
ここで高田さんがカメラを無くしてしまったが、潜って探したところ川底で無事発見することができた。これほどの沢の写真が撮れないのは悲しい。流されていなくてよかった。
その後も泳ぐ箇所が何カ所か出てくるが、問題なく突破。
沢の主(蛙)との対面 さわっても微動だにしない |
以降は比較的楽に突破可能 |
時々射す日差しが暖かい |
水と景色に感動しっぱなしである。
なんだか今日の記録は余裕がありそうに見える?
そう、確かにこのあたりまでは実際余裕であった。このあたりまでは...。
流されたり巻き込まれたりしたらやばそうなボイルの横をへつったり泳いだりして抜けてゆく。
上の写真に写っている淵は岩沿いに泳いで左岸の草付きあたりに上がり、残置支点で振り子トラバースをし、竜神ノ瀬戸に侵入した。
ここで、ロープ回収時にどこかにロープが引っかかり回収に手こずる。高田さんがほぼフリーで戻り、回収してきてくれた。本山行では助けてもらってばかりである。。。
なお、竜神ノ瀬戸を巻く場合は振り子トラバースをせずすぐ手前のルンゼを上がれるようである。
いよいよ竜神ノ瀬戸に至る。圧倒的な威圧感から、強い恐怖を感じた。
ほんとに突破できるのだろうか...とか思いつつも、一度は経験しなければなるまい。先陣を譲っていただく。
一回目、荷物を全て置きロープをセット。左岸をギリギリまで進み壁を蹴ってクロール。流心に流されるも、流れがあたる窪み部分をキャッチすることに成功。そのままバンド方向に泳ぐも、白泡で沈む!自分の居場所が全く分からなくなったところでロープを引っ張ってもらい、なんとか水揚げ。溺れかけ、高田さん曰く顔が真っ赤であったようである。
その後も数トライするも、うまく進めず回収してもらうこと数度。だいぶ水も飲み、疲れてしまいリタイアし、高田さんに代わる。
高田さんも1回は流れに負けて回収。
しかし、ついに先ほどの窪みをキャッチ、そこからは1回でバンドに至ってしまった。
窪み部分を登り、バンドに向かってジャンプ!そのままガチ泳ぎでキャッチしていた。
さすがです。
その後、荷物を引き上げ、自分も対岸に水揚げしてもらった。
ただ、対岸のスペースは狭く荷物を置くのにも工夫が必要であったため、荷が多い場合事前に突破の手順を考えておいた方が良いかも知れない。
バンドを上がった先で残置支点を利用し、懸垂下降で河床に戻る。
それにしても震えが止まらない。これは水流による寒さだけでは無いと思う。ロープがなければ トライの回数=死亡回数 であっただろう。
こっぱ沢出合の手前にも強い流れの箇所があり、そこは右岸から高巻く。
ここで先頭を行かせてもらうが、下りられそうな場所をうまく見つけられず高くまで上がってしまった。高田さん曰く、下の方に懸垂可能な場所があったらしい...。
沢に復帰する場所の見極め力が不足していた。今後の沢でも気をつけなければならない。
そうこうしているうちに夕立がやってきて、雷光とゴロゴロという音を聞きながら沢への復帰を目指すが、沢も増水・笹濁り。薪もびっしょりに...。
幕営はこっぱ沢にわずかに入ったこっぱ沢左岸の高台に。
すでに外も暗くなり始めていたが竿を出し、短い時間だったが1匹だけアマゴを獲る。
雨自体はすぐやんだが、火はなかなか付かない・・・。かろうじて小さい火が点ったがいつまで持つか。
晩飯はα米と乾燥スープの雑炊。マシュマロでカロリーを摂取。アマゴもうまかった。
ズボンは寝るまでに乾いてくれなかったが、相変わらずよく眠れた。
24日
今朝は脱渓し、林道を帰るだけ。林道は相当荒れているとは聞いているが、道は道であろう。明るい気分で朝食の蕎麦をすする。
脱渓は栗代林道まで行かず、幕営地からすぐの大きく沢が屈曲した場所に伸びる尾根を使った。序盤は悪いが次第に歩きやすい尾根へ。ところで、こんな場所でも釣り師が設置したのであろう金具やロープが見られた。林道が崩壊するまではこの尾根を使って下りてっていたのだろう。恐ろしい程までの釣りへの執念を感じた・・・。
1時間とちょっとで林道まで上がる。やれやれ、なんとか生還できた。八丁暗見や竜神ノ瀬戸、その他にも流されたり落ちたりしたら助からなそうな水流が多数あり、よい経験と刺激を得られた。なんせよ、あとは長い林道を利用しててくてく歩いて帰るだけ。ザレのトラバースもあるようだが、まあ問題ないだろう。
そんなわけは、なかった。
高巻き もう勘弁してくれませんか。。。? |
極めつけには、懸垂下降で下におりてからのザレトラバースや、入渓点目前ではザレ自体を大きく高巻いたりと、これ自体で命がけのアクティビティーとなるバリエーションの豊かさである。
そして、すさまじい数のヒルが会いに来てくれる。足首の1つの出血箇所にぶくぶく太ったヒルが5匹くらいたかっていたときは、もはや感動すら覚えた。
脱渓から6時間、追加で命を燃やしなんとか林道まで戻ってきた。
ここからは奥泉駅まで行き、電車で千頭まで。素敵な電車であった。
道の駅川根温泉でさっぱりし、各々帰宅した。
総括
こんな記録を書いといてあれですが、栗代川は本当にすばらしい沢で、沢泊のノウハウや自分の能力の至らない点を多く把握し、高田さんに指導していただけるという非常に恵まれた充実した山行となりました。
自分の中では新世界のような難易度で、まだまだ後輩達は連れて行ける実力はありませんがなんとかそのような実力を目指して精進します。
栗代川に入られるような方は私よりよっぽど分かっていらっしゃると思われますが、沢の様子はダイナミックに変化しています。
以前の記録では、淵が埋まったりした箇所があるようでしたが今回の時点では再び深く抉られており、高い泳力がなければ突破は難しくなっています。
また、下山に林道を使われる場合も、非常に危険な道となっており、今後さらに崩壊が進んだら完全に通れなくなるのかなあと思います。
感想
残機(ハスイ)99→5
(文:蓮容)
0 件のコメント:
コメントを投稿