日時:12月19日(土)~12月20日(日)
メンバー:CL宮下,SL蓮容,市川,中嶌,森,芳村,東,金子,増地,鈴木,村岡,大井(OB)
行程:
19日:静岡=美濃戸口駐車場-北沢-赤岳鉱泉付近雪上訓練
20日:赤岳鉱泉-赤岩の頭-硫黄岳-赤岩の頭-赤岳鉱泉-美濃戸口駐車場=静岡
記録:私は雪山に行くかどうか迷っていた。当時の私は雪山に対して、多大な恐れを抱いていた。即ち、雪山=死。というのは言い過ぎだが、優柔不断な私は、冬山装備を買う決心がつかないでいた。そんな時、部室に冬靴とアイゼンがあるかもしれないという噂を耳にする。
私が雪山に行くかどうかは、サイズの合う冬靴があるかどうかで決めることにした。なんとも冬靴シンデレラ他人任せな方法である。
結局、奇跡的に私の足にぴったりな冬靴とアイゼンがあってしまったので、有り難く雪山に行けることとなった。こうして、山岳部に入部して初めての雪山が幕を開けた。
12日、テント場である行者小屋に向かった。
林道
テントを張り、雪上訓練ができそうな場所まで歩いた。
今回は、主につぼ足歩行、アイゼン歩行を行い、安定した雪上歩行を身につけることを目標としていた。
良さそうな場所を見つけたので、先輩と後輩、2人1組になって練習を行った。
適地
雪はさらさらとしていて足が深く嵌ってしまうところもあった。我々はつぼ足歩行を意識しながら、延々と歩き回った。
これ以外に移動の際にも、先輩から歩行について注意を受けることがあった。特に一回生は、足の間隔が狭く、踵を擦ってしまいそうな人が多いようだった。
歩き回る
踏み均した地面
一回生である私は、もたもたと焦りながらアイゼンを付け、アイゼン歩行を雪上では初めて行った。感想としては、アイゼンは重いが、地面に刺さるため、安心感があるということである。
練習場を後にし、次の訓練へと向かった。
埋没してる人
次に行ったのは埋没体験である。雪崩に遭遇した際、雪に埋まってしまった人を一刻も早く助けなければならない。そこで、我々は雪に人を埋めて、ゾンデ棒で刺し、雪との感触の違いを体感した。雪に埋まった方々は、雪中の冷たさを体感した。
埋める埋める
とはいえ、皆さん容赦ない。ヒトに、本気で雪を被せていくではないか。ヒトはみるみる埋まっていき、影も形もない。最早ゾンデ棒でしか確認する術はない。「さむい…さむい…痛い…!」と言いながら見えなくなっていった宮下さんの顔が忘れられない。
感触を確認
順番に、埋まった人をゾンデ棒で刺していく訓練が始まった。
私は蓮容君を刺したのだが、何度刺してもわからない。これ雪?ヒト?というわけで何度も刺した。最後ようやくわかった気がした。
その後、ビーコンを雪の中に隠して生存可能時間の15分以内に見つけ出すという訓練も行った。
冬の定番
夕食の鍋をいただき、眠りについた。
20日、早朝に硫黄岳へと向かった。
樹林帯を登り、山頂を目指す。私は相変わらず余裕が無く、地面を一心に見詰めながら歩いていた。確か、小休憩の際「周り見渡してごらん」と言われて、顔を上げるとそこには見たことのない景色が広がっていた。
深い緑の針葉樹の上に、パウダーシュガーのような雪が降り積もっている。辺り一面殆ど白でできた世界に、私は、(ここどこだろう?)という感想しか抱かなかった。八ヶ岳である。
その先には地獄が待っていた。
恐ろしい強風であった。
樹林帯を抜けた途端、我々は激しい強風に見舞われた。
風の冷たいことといったら…!「冷たい」というより「痛い」である。
私の家から適当に掘り出してきた裏起毛のネックウォーマーは、裏がさながら霜柱であった。ゴーグルは周囲から凍りつき、時々ずらして前を確認しながら歩いた。
なんといっても痛かったのは耳である。耳なし方一のように、私は耳だけが露出し、特に左耳は強風に直に晒されることとなった。猛烈に痛い。なんとか手で押さえながら、(こうして凍傷になるのかあ…)などと考えながら前に進んだ。
記念撮影
途中恐ろしい岩場を乗り越え、なんとか山頂に辿り着いた。真っ白で何も見えなかった。
下山
恐怖の稜線歩きを終えて、下山した。あのような恐ろしい思いは二度とするまい、と心に誓った。
ここで癒しの村岡
まとめ:
初の雪山は、色々と楽しいこともあったのだが、如何せん頂上付近の天候が悪かったことから、大変な記憶として残っている。耳は霜焼け程度で済んだ。
しかし、この経験はしっかりと次に生かそうと思い、裏起毛じゃないネックウォーマーと耳付きのニット帽と曇り止めを新調した。
家に帰ると、次の雪山のことを考えていたのが不思議である。
何故雪山に行くのか、と自問するページがスケッチブックに見つかった。行きたいから行くのです…と美少女が言っていた。悪魔である。
ともあれ、先輩方から雪上歩行の方法をみっちりと教えていただき、充実した山行となった。雪山の厳しさ、そして美しさも身に染みて感じることができた。
(文:芳村)