2019年5月10日金曜日

2019/5/3~5 北アルプス岳沢周辺 奥穂南稜・雪上訓練(残雪合宿)

日時:2019年5月3日(金)~5月5日(日)

メンバー:
南稜隊CL高田,SL若月
前穂隊CL大井,OB小林さん,橋倉,市川,田中,中嶌,宮下,森
参加OB:分部さん、西田さん、真達さん、青池さん、小林さん
行程:
3日:静岡(2:50)=沢渡駐車場(8:10~40)-上高地(9:10~9:45)-岳沢小屋(13:10)-小屋周辺(雪訓14:05~16:40)
4日:
奥穂南稜隊:岳沢小屋(4:14)-南稜取り付き(4:45)-トリコニー1峰(5:45)-南稜の頭(7:30)-奥穂高岳(7:40~7:52)-吊尾根最低コル(9:50)-(前穂高沢)-岳沢小屋(11:15)-小屋周辺(雪訓14:10~16:20)
前穂隊:岳沢小屋(4:50)-(奥明神沢)-前穂高山頂下200m程(9:13)-(奥明神沢)-岳沢小屋(14:05)-小屋周辺(雪訓14:10~16:20)
5日:
岳沢小屋(6:20)-上高地(8:20)-沢渡駐車場(9:10)=静岡(19:40)

記録:

3日:晴れ 但し風強し

大井が長距離ドライブデビュー戦。
部分開通した中部横断道無料区間を利用しつつ、夜の空いた道をひたすら北に向かう。
だいぶ黒くなった八ヶ岳を見送り、塩尻峠に差し掛かると後立山の北部まで見通せる北アの大絶景。
日本アルプス初めての森に山の名前を教えなどしていると沢渡に到着。
世紀の大連休とあり混んでいるかと思いきや、それほど混んでいない。
東北・北海道など遠くに遠征しているのかな?
毎度のことながらタクシーのドライバーさんと交渉し、バスより安く上高地へ。

トイレ、体操、体調確認を済ませたらいざ岳沢へ。
しっかり体操。注目を集めていました


河童橋のところで一旦止まって概念把握


樹林帯内でも比較的大きなデブリが横切っている。雪崩のリスク管理は難しい


雪が繋がっており沢沿いになんとか行ける


コブ沢からの大雪崩。デブリがすごい。


ザック二個持ち。体力の衰えを感じ悲しい
GW直前~GW前半に暖かい雨、雪、気温低下と雪の状態が不安定だったようで、
樹林帯内での比較的大きな雪崩跡、コブ沢からの大雪崩跡などデブリが凄かった。
樹林帯内でも悪条件が揃ってしまえば、規模の大きな雪崩が発生するという良いサンプルを見させてもらった。
コブ沢の大雪崩については岳沢小屋のブログでも触れられている。
https://www.yarigatake.co.jp/dakesawa/blog/details/1262/
沢沿いに出てしばらくしたところから橋倉のペースがガクッと落ちる。
1年以上山から離れていた影響のように思う。少々無理やり誘った節があったので、後ろめたさからザックを預かる。

いつもよりだいぶ時間は掛かりながらも岳沢小屋に到着。
ここもGWにしては空いており、3つのテントを広々張らせて頂けた。

初日の雪上訓練は雪上歩行(ツボ足・アイゼン)を行った。
雪山初めての田中・森の飲みこみがよかった反面、雪山何度目かの2年生部員の方が危うげだった。
雪上歩行での重要項目をめっっっちゃ単純化すると
①足裏をなるだけ全部使う(接地)!
②左右の足の間隔開く!
これに集約される。「かかと近づかない」「腰引けない」…
気を付けることを言い始めるとキリがないが、上の2つの原則は常に意識してほしい。
この2つをしっかり守った歩行ができていれば、およそ良い歩行になっていると思う。
雪訓中
2年生への雪訓指導後、上級生でスタンディングアックスビレイの研究をした。
Q.ピッケルの埋める向きは横か縦か(体が向く向きは斜面下方向か横向きか)
横派:アイゼンでスリングを踏まなくてよい
縦派:斜面上方向の確認もできる為、落石などへの対応が可能

Q.そもそもロープを通すビナにスリングを介する必要は無いのではないか。
シャフトにカラビナを直接かければよいのではないか。
メリット:必要装備が減らせる。スリングが無くなった長さ分、より体の真下で引かれるようになる。
問題点:シャフトに掛けるカラビナの向きによってはカラビナ・ピッケルに負荷がかかる。
カラビナの型によっては適さない。スリングが衝撃加重を多少和らげてる説(スリングは伸びがないけど、でも…)

夕飯は、鶏塩鍋。水菜、白菜がきのこの出汁を含んだスープで浸潤し、とても美味だった。
2年生

4日:晴れ

新月前後とあり、星空が美しい朝3時に起床。
我々奥穂南稜隊は行程が長いこともあり、一足先に出発。
南稜取り付きまではデブリが悪さをし、アイゼンを履いていると歩きにくい。
雪面が少しでも緩んでいればアイゼンを脱ぎたいところ。
南稜の取り付きは、扇沢大滝の左側尾根を左側から回り込んだところから。
雪が少ない年だとシュルンドが大きく、取り付くのが難しいらしいがそんな難しさもなくクライムオン。
南稜取り付きの少し上でハイマツが出ているところが少しあるが、それを越すと気持ち良い雪壁が続く。
トリコニー取り付きまでは休憩できるような緩斜面はほとんどない。
トリコニー手前に1箇所10m程と短いが垂直に近い雪壁が出てくる。
雪庇も少し出ており、状況によっては難しいところだと思う。
ここでは唯一ロープを出した。
ハイマツ帯を抜けたところ


乗鞍・焼岳 モルゲンロート





トリコニー取り付き下の垂直に近い雪壁


若月と前穂


1峰・2峰間リッジ




奥穂高岳山頂 素晴らしい展望で迎えてくれました


ジャンダルム方面
トリコニー1峰は岩の間を縫って易しいクライミング。2峰は一瞬で終了する。
1峰・2峰間のリッジは扇沢側に雪庇が出ており、コブ沢側をトラバースしていく。
リッジの厚みは1m無く、スリルがある。
ここを抜けると南稜の頭まで傾斜は緩む。
奥穂高岳山頂は穂高岳山荘方面から来た人たちで賑やか。
峻抜な槍ヶ岳に始まる穂高連峰は山へと心奪う魔力がある。
南稜の頭辺りまで戻り休憩を入れ、甘くないという吊尾根に向けて気を引き締め直す。

吊尾根は雪が繋がり、雪庇の出ていない部分は稜上を行き、
稜上がいけない時は岳沢側を巻いていく。
なるほど。難しいセクションが長く続くようなところは無いのだが、一歩だけ悪いといった場所が点在する。
陽が高くなり雪も腐っており慎重に進む。
吊尾根を前穂高まで抜ける予定であったのだが、
吊尾根最低コルから前穂高沢へのトレースを見て自分たちもこちらへ降りていくことに。
始めこそ広い沢なのだが中間部以下は広くない沢で、落石・雪崩があると怖い場所だ。
実際、中間部に差し掛かった時、ソフトボール程の落石が空間を切り裂くような凄いスピードで飛んで行った。これを見て2人の歩調は早まった。
沢の下山は早い一方、単調で飽きる。飽きると歩行が雑になり易い。注意しながら岳沢小屋まで下山した。

午後、前穂隊の帰りを待って雪上訓練を行う。
項目は
・雪上支点の構築・強度実験(ボラード・スノーバー縦/横埋め・デッドマン)
・雪上歩行再確認
・弱層テスト・弱層評価方法

青池さんと合流し夕飯のカレー。
市川が持ってきた不思議な色の魔改造じゃがいもを除いて、とても美味でした。
吊尾根から涸沢のテント村をのぞむ


前穂高沢へ下降




5日:晴れ

天気よく名残惜しいが下山する。
しっかり体操


最後にみんなで




河童橋まで下山


また来ます

まとめ:
初心者が含まれる前穂隊が傾斜のきついダイレクトルンゼを超えて前穂高山頂直下200mまで行ってしまうというヒヤリハット事案があった。
事前計画の段階では、今回前穂隊に参加したメンバーは更に2グループに分け、技量・経験が足りない者は岳沢周辺での散策・訓練の予定となっていた。
前日討議の結果、全員奥明神沢を登り、傾斜のきつくなるダイレクトルンゼ付近で隊を分け技量・経験が足りない者は下山することとなっていた。
だが実際には隊を分け下山することは無かった。
このような判断に陥ってしまった原因として
①引き返しタイミングについての共有認識の曖昧さ
②山頂まで行きたいという隊員意志を優先してしまった
③下山時の危険が予測しきれていなかった
④現役部員とOBでリーサブを組んでおり、隊員力量の適切な評価ができていなかった

下界でのリーダーと、山中におけるリーダーで最も優先すべきことは違う。山中におけるリーダーが最も大切にすべきことは、パーティーの安全管理。
自身の判断特性を客観的に把握し、誤った判断を起こさないために何に気を付けるべきか再確認が必要だ。

(文:高田)

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