2003年8月20日水曜日

2003年8月12~19日 黒部川上の廊下(夏季合宿)

夏合宿沢合宿'03 黒部川上ノ廊下

上の黒ビンガ 快晴。アイシング 沢合宿'03 黒部川上ノ廊下
日時:2003年8月12日~8月19日
メンバー 青木睦佳(農3) 久保裕(農3) 中戸川好康(理1) 中岡稔充(OB)






















8/12(火) 晴
   5:30静岡~12:00扇沢13:00~13:30黒部ダム~16:20中ノ沢出合(平ノ小屋手前)
もう少し早ければ平の渡しの最終に乗れたが、渡ってしまうと良いテン場がないので調度よかったかもしれない。


アプローチ 入渓 8/13(水) 晴
   7:30出発~8:00平ノ小屋~10:05平の渡し~12:00奥黒部ヒュッテ12:30~12:50熊ノ沢出合
 10:05の船に乗る。一時間前あたりから続々と人が集まり、この人数全員乗れるのかよ!と思ったが、結構無理やりな感じでなんとか全員乗れた。この人数みんなが上ノ廊下にいくかと思うと少し嫌な気分になるが、人気の沢だししょうがない。奥黒部ヒュッテにはタイ人の姉ちゃんがいて、増水していて明日から天気が悪いと聞いた。


いきなり沈 8/14(木) 雨
   沈殿
 雨強く沈とする。近くのボルダーで遊ぶ。ただでさえ増水気味なのにさらに水量が増えていき不安だ。










下の黒ビンガ 8/15(金) 曇り
  7:10出発~11:00口元ノタル沢~16:20口元ノタル沢先の河原
やはり増水している。出発してすぐに徒渉があり、ここで止まっているパーティーもいる。青木、久保、中戸川の三人は早くもここで諦めムードだったのだが、中岡さんが徒渉していく。さすがです。ザコ三人衆は投げてくれたロープをしっかり持って、激流の中に身を委ねれば勝手に対岸に到着。こうして次々と徒渉を繰り返す。他のパーティーが巻いたところも中岡さんが泳いで、へつって、飛び込んでと奮闘して抜けていく。三人はザックピストンで行くが、流れが強いため寒いしバランス崩しそうになるしドキドキした。引っ張る中岡さんも流れのせいで重そうだ。途中で久保ちゃんが流されるも、ロープを投げつけて救出。いやあ、無事で良かった。今日は本当に厳しい遡行でした。水の勢い、力強さというものを嫌というほど堪能できました。

広い河原 水流は冷たい やさしい徒渉 白い花崗岩。中岡が捻挫する

8/16(土) 晴
   7:00出発~9:00上ノ黒ビンガ~10:30金作谷~12:10赤牛沢手前の河原
やっと気持ち良く晴れた。昨日に比べたら今日は大分緊張する場所は少なかった。怖い徒渉もみんなでスクラムを組んでどんどん突破していく。スクラム徒渉は楽しいしかなりパワーアップできてすごく使える。上ノ黒ビンガから始まる絶景は見もの。上ノ黒ビンガから始まる絶景は、上ノ廊下にきて良かったと思わせてくれた。金作谷まで、所々難しいへつりがあったが、お助けロープ程度で突破できる。核心を抜け、これは完全遡行できるかな?と思ったが、甘くなかった。三人が水際をへつっていると、中岡さんがいつもの遊び心で岩棚から岩棚へジャ~ンプ。が、着地に失敗。足を捻挫してしまう。かなり痛そうで、歩くこともままならない。少し先の河原に泊まることにするが、こんなに痛そうにしている中岡さんははじめて見た。腫れもどんどんひどくなっていき、小指が親指くらいになっていた。ここまでおんぶに抱っこできてしまったので、急にプレッシャーを感じる。ここは沢のど真ん中、どう動くにも動きづらい。不安を抱えたままねていると、夜中
になって雨が降り出した。
敗退を決定、同時に土砂降りになり増水。 温泉に入った

















8/17(日) 雨
   9:00出発~12:00赤牛沢~12:40岩苔小谷~13:50二股~15:30唐松の湯
 昨夜からの雨でかなり増水してきている。岩苔小谷から高天ノ原に抜けることにする。中岡さんの足の具合はかなり悪いようだ。腫れの為鮎足袋が履けず、ガムテ
ープで足をグルグル巻きにして地下足袋を履く。昨日簡単に突破できそうだった淵も増水で無理。巻くことにする。一旦巻くと、なかなか降りられる場所がなく、かなり大きく巻くことになってしまう。ようやく降りられそうな場所を見つけて懸垂をする。が、懸垂している間にみるみる増水していき、流れは濁流に変わってしまった。さっきまで河原だった所もなくなり、仕方がないのでもう一度登り返す。結局赤牛沢出合 まで巻くことになった。岩苔小谷も当然増水していて、案外難しい。二俣からは高天ノ原へと続く踏み跡がある。温泉はありがたかった。お湯がぬるく、出るのにかなりの勇気が必要だった。夜になっても雨は止まず、昨日に引き続き寒い夜だった。明日も長い行動。中岡さんはつらそうだが、頑張ってもらうしかない。せめて雨が止んでくれれば。

雲の平


















8/18(月) 雨
   7:30出発~10:20岩苔乗越~11:10水晶小屋~12:40真砂岳分岐~14:50湯俣岳~16:40湯俣~17:30名無小屋
 今日もずっと雨。昨夜も雨の中非常に寒かった。一昨日の夜から体はずっと濡れたままだ。でも今日からは登山道を歩くだけなので気持ちは楽だ。雨の中順調に進む。湯俣に泊まろうとも思ったが、もう少し頑張れば無人で快適な名無小屋なのでそこまで頑張る。久しぶりに雨に濡れることなく寝ることが出来る。薪のストーブもありがたく使わせていただき、体も心も温まる。味噌汁に飛び込んできた蛾にブチ切れたよしやすが印象的だった。今山行中一番感情を表に出した瞬間だったんじゃないかな。

8/19(火) 雨
   名無小屋~高瀬ダム~扇沢~静岡
 高瀬ダムまで歩きタクシーで扇沢へ車を取りに行く。後は車で静岡へ。

総括
 今回の沢は悪天による増水と、中岡さんの怪我によって非常に厳しいものとなった。唯一晴れた日に怪我するというのもまたなんともいえない運の悪さかな。青木、久保、中戸川の三人では熊ノ沢出合からの最初の徒渉で敗退だっただろう。ほとんど中岡さん一人の力で遡行していたため、中岡さんが怪我をしたことでかなりのプレッシャーを感じた。しかし、すでに核心を越えていたこともあり、無事自力下山できて良かった。一年生の好康は初めての長期の沢で大変な部分もあっただろうが、良い経験になっただろうし、自信にもなったと思う。実際、体力もあるし強いと思う。唯一 晴れた16日は上ノ廊下の素晴らしい景観を感じることが出来たし、17日の大増水、濁流となった黒部川は恐ろしさを感じさせてくれた。自然の厳しさ、素晴らしさを改めて感じることが出来た。やはり素晴らしい沢だと思う。是非もう一度挑戦したい。そのときは自分の力で挑みたいと思う。今まで徒渉が厳しい沢というのは経験したことがなかったで、良い経験になったと思う。可能生が広がったと思う。またスケールの大きな沢に行きたい。
(文責 青木)

2003年3月17日月曜日

2003年3月4日~15日 春山合宿'03 硫黄尾根~槍ヶ岳~南岳西尾根

 春山合宿'03 硫黄尾根~槍ヶ岳~南岳西尾根

日時:2003年3月4日~15日
メンバー 青木睦佳(農2)、中岡稔充(OB)



3/4(火) 雪
   6:10東静岡駅~13:00信濃大町14:00~14:20葛温泉~17:00高瀬ダム
電車で信濃大町に13時着、スーパーで今日の分のレーション、晩飯、 明日の朝飯を買う。また、前回に続きおぼんの代わりに雑誌も買う。タク シーは七倉まで入らず葛温泉までで、五千二百円だった。ここから歩くが、 高瀬ダムの登りが結構長く感じた。ダムではトンネルの中にテントを張り、 快適な夜を過ごす。

3/5(水) 晴れ
  7:55高瀬ダム~12:20名無し小屋12:40~16:40湯俣
 四時起きのつもりがいきなり寝坊。トレースは無く最初から結構なラッ セル。木道に積もった雪の上を渡るのは結構ドキドキしたが、そのうち慣 れる。名無し小屋は畳の部屋になっていて薪もあり、かなり快適そうだ。 しかしここに泊まるわけにもいかない、見るんじゃなかったと思いながら も先を急ぐ。平坦とはいえ重荷のラッセルはしんどく、湯俣に着いたとき にはかなりへばっていた。


 3/6(木) 曇り
  6:10湯俣~7:30硫黄尾根取付き~9:00尾根上~14:45 213mピーク手前
 取付きへはつり橋を渡り、水俣川を少し登ったところ。赤布が少しある。 つり橋を渡ってから徒渉二回。靴は濡らさずにすんだ。ここから尾根へ支 尾根ではなく、ルンゼを登ったが見た目より傾斜があり、がちがちに凍っ ている部分もあり、輪かんでは厳しく何度かずり落ちそうになりながらな んとか尾根上に出る。アイゼンに変えればよかった。尾根からはひたすら ラッセルでなかなか進まない。予定より進まなかったが疲れたし、いいテ ン場があったので泊まることにする。




 3/7(金) 雪
   6:30ピーク手前~14:50硫黄居前衛峰P6~15:30小次郎のコル
今日もラッセルが深く厳しい。硫黄岳前衛峰群に入っても、岩の上にたっぷり雪が載っている。P2の頭(だと思う)では、掘っても掘っても岩は出てくるが懸垂支点が見つからない。さんざん探したが結局見つからず、ハーケンを二本打ち懸垂。三本しか持っていなかったので残り一本。まだまだ先は長いのに不安が残る。P3の下りは岩峰でいったんは懸垂したが、序盤で捨てシュリの大半を失うのは怖く、中岡さんが空荷で登り返して回収してきた。この後このシュリンゲを多用することになったので、結果的に大正解だった。P4の下りは良い支点もないし頑張ってクライムダウンしたが、雪のすぐ下は岩でなかなか悪い。もし滑落しても止まるだろうと思い、半分ぶち切れで下る。輪かんをアイゼンにすれば楽なのだろうが、すぐ深いラッセルになるのでずっと輪かんだった。P6の下りは急だが、雪がいい状態ならノーロープでいけるだろう。この時はクラストした箇所があり、適当なところに潅木があったので懸垂で降りる。降りると小次郎のコルで、ここからは北鎌と槍の姿が見えた。まだまだ遠いぜ。

3/8(土) 雪
   沈殿
 前の晩のラジオで冬型が強まると聞き、停滞を決め込む。結果的には動けないこともなかったが、まあ正解だっただろう。明日はさらに冬型が強まるとのことだったが、午後から晴れてきたので、明日は動くことにして就寝。


   3/9(日) 晴れ
  6:40小次郎のコル~12:10硫黄岳~15:30雷鳥ルンゼ直下のコル
心配していた天気はピカピカに晴れた。ちょっと拍子抜け。硫黄岳の登りもラッセルが深く、傾斜もあり遅々として進まない。硫黄岳からは雪も締まっていて、途中で輪かんをはずす。今回の山行で初めてアイゼンとな る。雷鳥ルンゼは一ピッチ懸垂した後、ロープを連結し、スタカットで下る。ロープいっぱいでルンゼを降りきり、ここから'一ピッチの登りで尾根上に戻る。ここで、千丈沢側の雪をL字に切り、テン場とする。風も当たらず快適なテン場であった。二人用テントなら、時間もかからずこの張り方はかなり良い。








 3/10(月) 晴れ
  6:30雷鳥ルンゼ直下のコル~7:00南峰~9:30赤岳前衛峰群P3・P4のコル~16:25P6・P7のコル
南峰の登りは雪が締まっておりサクサク進む。南峰からガレ場を降り右に曲がったところからいよいよ核心の赤岳前衛峰群だ。P1,P2は湯俣側を巻き、P3は中岡リードで登る。次のP4は登るとするとランナーもとれなく、逆層っぽくなっており難しそうだ。結局このP4をP6だと思い湯俣側から巻こうとする。しかしこれが間違いで、小さく巻こうとすると岩に阻まれてしまう。ルートを探しながら何度も行ったり来たりを繰り返し、かなり大きく巻くことになってしまった。登り返して3・4のコルに戻るしかないかもしれないと思ったが、雪崩れそうな斜面をビレーしてもらい空荷で偵察にいき、ついに凹角状の岩の切れ目を見つける。ここを登りやっと尾根上に戻ることが出来た。かなり時間がかかってしまった。P5は容易で、P6は直登しようとしたが行き詰まり、ようやく今登っているのがP6だと理解した。これを湯俣側から巻くと、ちょうどP6・P7のコルに出る。今日も雪をL字に切りテン場とする。このころから青木の足が凍傷気味で、テント内で操んだりするが、なかなか感覚が戻らなく少し不安だ。




 3/11(火) 晴れ
  6:40P6・P7のコル~10:30中山沢のコル
今日は北西からの風が強く、ビレーがかなり幸い。中山沢のコルまではすぐだろうと思っていたが、思いのほか難しく、ここでも少し迷いながら進む。P8の最後の登りは脆い岩を騙し騙し登る。登りきり左にトラバースしていくと懸垂支点がある。ここから4mの懸垂で中山沢のコルに降り立つ。寒さと、核心部を抜けたという安堵からか、今日はこれ以 上行動したくなくなってしまう。迷ったがここに泊まることにする。コルは風が強いし時間もあるので雪洞を掘る。二時間程で完成。ここから見る赤岳への登りは傾斜があり、なかなか難しそうだ。まだまだ気を抜けない。今日も足を暖めてもなかなか感覚が戻らない。色も白く血の気が無い。ひどくならないことを祈る。このところ寒く夜中に目が開くことがあったが今日は雪洞だしよく眠れるだろう。





  3/12(水) 晴れ
  8:30中山沢のコル~11:10赤岳~14:10白樺台地
テントの撤収がないので、いつもより一時間遅い五時起床とするが、入りロが完全に埋まってしまっていて掘るのに時間がかかり出発が遅くなってしまった。今日もやや風がある。コルから赤岳までスタカットで登り、赤岳主峰群も積極的にロープを出し慎重に行く。白樺台地はだだっ広い雪面で、妙にはしゃぐ。やった一!ついに抜けた一!広いためなんとなく落ち着かない。ブロックを積みテントを張る。






















 
3/13(木) 晴れ
  6:30白樺台地~7:OO西鎌尾根~10:00千丈沢乗越~11:40槍ヶ岳肩の小屋12:20~12:40頂上~13:40肩の小屋
 西鎌尾根までまだ結構距離があると思われたが、クラストしておりアイゼンのつめが良く効く。すぐに西鎌尾根に出た。ここからは主に夏道沿いに行く。今日も天気は良く、朝少し風があったがすぐに止みぽかぽか陽気だ。千丈沢乗越の手前あたりから青木が高山病の症状を訴えぺ一スが落ちる。槍の肩への登りは見た目よりも長く、苦しい。ふくらはぎも疲れる。肩の小屋についても具合は悪いままだ。南岳小屋まで行く予定だったが、肩の小屋に泊まることにする。大休止の後念のためロープとシュリンゲを持って槍を往復。今日も天気が良いので頂上からの景色は素晴らしい。自分達が登ってきた硫黄尾根も全部見渡すことが出来る。今度は北鎌から来ようと思い頂上を後にする。小屋にはトイレもあり快適だ。「非常時にお使い下さい。」と書かれた缶の中にはアルファ米とククレカレーがあり、 非常時ではなかったがありがたく頂く。久しぶりに腹いっぱいで眠る。


 3/14(金) 晴れ
  7:30肩の小屋~9:20南岳~12:35西尾根2700m~15:40西尾根末端~16:30滝谷非難小屋~18:10白出沢小屋
 五時半起床、七時半出発。二時間程で南岳に着く。西尾根は姶めただの斜面を降り、急にやせ尾根となる。傾斜も強くなるがロープを出さずに降っていくと、さらに傾斜が増し懸垂で降りたいが、支点が無い。雪を掘って探すが見つからず、スノーボラードを作り支点とする。この懸垂方法は初めてなので、強度は大丈夫か分からず緊張した。降りた感じでは締まった雪なら結構しっかりしていると思う。この尾根は途中から夏道になっていて、2700mでは看板もあった。降りるに従い雪が腐ってきて歩きにくい。デルタ状岩壁は右から懸垂しながら巻き降る。槍平に泊まっても良かったがここまできたら明日中に静岡に帰ってしまいたくなったので、滝谷非難小屋まで行くことにする。非難小屋は思ったより大きく、ゴミが少しあったが快適そうだった。ここまで来るとやはり白出沢小屋まで行ってしまおうということになった。白出沢小屋からはトレースがあるだろうと思ったがなかった。ちょっとがっかり。






















3/15(土) 雪
   8:30白出沢小屋~10:20新穂高温泉~高山~静岡
 起きると久しぶりの雪。気が抜けてるせいか新穂高までがやけに長い。去年は入れなかった温泉に入りバスで高山へ、九時頃には静岡に着いた。

総括
 冬合宿に引き続き二人きりの合宿となった。今回は天気に恵まれ、充実した山行になった。硫黄尾根はほとんど残置がなくルーファイが難しく、ラッセル、岩稜、雪稜と変化があり長い尾根ということもあり様々な要素があり非常に楽しかった。個人的には珍しく気合が入っていて、集中力が途切れなかったと思う。自分の成長も少しは感じた。しかしまだまだ難し い箇所はリードしてもらったし、ラッセル力も足らないと痛感した。凍傷にも気をつけなければならない。(帰ってから激痛だったけど大丈夫でした。)今回は初めから終わりまでトレースが無かったし人に会うことも無かったため、山に浸れた感じがした。こういう山行をまたしたいと思う。二人だったのでロープを出しやすかったが、人数が増えたときはどうしてもスピードが落ちるだろうしまた、出すタイミングも難しいと思う。しかし合宿というからにはもう少し大人数で今回のような山行をしてみたいと思う。
(文責 青木)

2002年9月28日土曜日

2002年9月25~26日 富士川水系福士川 中流部ゴルジュ遡行

富士川水系福士川 中流部ゴルジュ遡行

日時:2002年9月25,26日
メンバー 深沢(農M2)、山本(農M2)、田丸(農4)、青木(農2)、久保(農2)、桜庭(院研究生)


 
 9/25 晴のち曇
   8:30静岡~10:00徳間~10:30遡行開始~11:00第一ゴルジュ~12:00第ニゴルジュ~14:30第ニゴルジュ上
 山本、青木の車に分乗して福士川を目指す。今日はこの時期としては比較的暖かい。適当に買い出した食料を分けて、遡行を開始する。堰堤を越え、巨岩が転がる広い河原を歩く。巨岩だらけで歩きづらくなった頃、いきなり沢幅が狭まってゴルジュとなる。第一ゴルジュは一応ロープを出す程度で難なく通過。問題の第ニゴルジュ。去年の登攀ラインは水流に洗われ、取り付けるかわからない。最初は田丸が飛び込みで通過を試みるが流れに撃退される。次は櫻庭が秘密兵器の足ヒレを使い水流越え、滝に取り付く。滝の水流を避け、窮屈なチムニーを越えて、巨大なチョックストーンの下に入る。去年中岡が打ち込んだボルトが並んでいるが、斜めに延びている。どうやら大チョックストーンが傾いたらしい。そのせいでボルトが水流に洗われ、腐っているように見える。一本目は大丈夫だが二本目は抜けてしまった。アブミに乗ってせっせと新しいボルトを打ち込む。ボルト4本の人工で第ニゴルジュ突破。しかし、問題はその後で後続が登って来られない。田丸だけ抜けてきたが、後は長く水につかって体力を消費してしまい、登ってくることができない。仕方ないので他の4人は巻くことにする。第ニゴルジュ上で焚き火が燃え上がる頃、巻いたメンバーが懸垂で沢床に下りてくる。そのまま、そこで幕営。



 9/26 曇り
  10:00出発~12:00第三ゴルジュ上~14:00第四ゴルジュ上~15:00遡行終了
 少し歩くと第三ゴルジュ入口。去年越えられなかった流れの強い渕は秋ということもあり随分と水勢弱くなっているように見える。にしても泳ぎの弱い僕らパーティーには十分難しい。久保が足ヒレと水中眼鏡を使ってクロールで突破。第三ゴルジュの出口は3m程の滝だがオーバーハングして直登できない滝である。櫻庭が右岸側壁を3本のハーケンを使って越える。第四ゴルジュも去年とは流れが違う。青木が最初の釜を簡単に越え、巨大ポルダーのてっペんにボルトを打ってFIXする。後続を迎え、去年振り子泳ぎで突破した最後の釜に入るが、水量が少なくはるかに簡単だった。最後の滝をこえて4つのゴルジュを完全突破。そのあと巨岩の乗り越しに一箇所苦労したが、観光用の遊歩道に上がり遡行終了。青木と山本が車を取りに下り、奥山温泉に入って帰る。奥山温泉は5時までなので4時までには遡行を終えるように頑張ろう。七つ釜入口の1KM上なので、歩いてきたときも時間があればよっていくといいと思う。帰りは長沼のスタミナ太郎で焼肉を食って帰る。そういえば自分は明日誕生日だった。

総括
 福士川中流域ゴルジュ帯を「泳いで滝に取り付きダイレクトに突破する」という周論見はうまいこと達成することができた。中岡のチャレンジ精神が突破口を切り鯛いて完成させた山登りだったが、当の本人はビックロックの大岩夫妻と錫杖岳ヘルート開拓にいっていた。中岡の山登りに対する向上心がいまだに燃えていることを示している出来事だと思う。さて、山行内容についてだが、やはり沢は一年間で随分変化するもので、予想していたものと随分違っていた。今回の場合、予想以上に簡単になっていて問題は発生しなかったが、当然予想以上に難しいなんていうこともよくあることで、そういう部分を乗り越えていくのも山登りの面白さであると思う。最初からわかりきっていたら山登りなんてやってないだろう。冬山なんていうのはそういう不確定要素(特に天候、積雪)が強いので好んでやっているわけだ。ちょうど岳人に「ゴルジュ突破やろうぜ」という企画が掲載されていて、福士川が難渓として紹介されていた。なんだかいい気分ではある。しかし、ボルトを使用しなくては越えられず、よりよいスタイルで遡行する余地はまだある。完成までに三度のトライを要したこの遡行も10年後にはよりよいスタイルで、ちょっとした散歩のごとくやってのけるやつも出てくるだろう。そういった進歩を疑うことなく夢見れる山というフィールドは僕たちにとってやはり最高のプレイグラウンドだと思う。その進歩に負けないぐらい自分も進歩していきたい。10年、20年後でもバリバリ山に壁るぞ。
(文責 櫻庭)

2002年9月4日水曜日

2002年8月27日~9月2日 朝日山地荒川中俣沢

沢合宿'02 朝日山地荒川中俣沢


日時:2002年8月27日~9月2日
メンバー 山本(農M2)、久保(農2)、桜庭(研究生)、中岡(OB)



8/27 晴
   5:00静岡~18:30小国~19:30針生平
アクシデントがあり、2:OOのムーンライトながらには乗れなかったが、始発の東京行きに乗り、乗り換えやタクシーをつかまえるのも順調にいって、予定していた針生平に到着することができた。夜は車止めで雑魚寝。

   8/28 晴
   8:00出発~8:40角楢小屋~9:30遡行開始~16:00毛無沢出合の小さな砂地
 角楢小屋先の入渓点まで吊橋を渡るなどして行く。ブナ林が立派だ。入渓点で身支度を整え、広い河原を釣り歩きしながら行く。イワナがかかるが小さいのでリリース。大帯沢出合を過ぎると、たまにヘツる場所かでてくる。最初の釜で中岡がイワナ1匹ゲット。毛無沢出含までゴルジュ状のところが続くがさして問題になるようなところはない。毛無沢出合の砂地を幕場と決め、夕マズメに行く。久保1匹、桜庭2匹。今日の釣果は4匹でまずまず。刺身と塩焼きの夕食。







   8/29 晴
   8:00遡行開始~10:30曲滝上~13:00綾滝~16:00西俣沢出合下
 曲滝は遡行図と違い、毛無沢出合から左岸を大きく巻いて、滝上に懸垂下降した。曲滝上は右岸が下降しやすいが、遡行図通り右岸巻だと出だしが結構難しいように見える。滝上左岸は壁もしくは、急な草付なので捨てシュリンゲの要らない大木で懸垂するのが懸命だろう。綾滝まではゴルジ ュ状だが遡行しやすく、釣りのポイントも多い。しかし、中岡が良型のイワナを釣り上げただけ。桜庭2回ばらす。綾滝は右岸巻と書いてあるが、バンドを使って直登する。最後は1ポイントの人工。ハーケンはよく効が、水流をモロに受けるので雨の日はやる気がしない。綾滝の上もゴルジュ状になっていて、3段10mの滝は直登不能。戻って右岸を大高巻。露岩があったりルンゼが切れ込んでいたりと厄介だ。ジャスト滝上に巻き下り、そのうえ100mくらいの狭いゴー口を均して幕場とする。すぐ上流にはスノーブリツジが懸かっていて、時折崩壊するのでビビる。






















 8/30 晴
   7:30遡行開始~9:30大滝下~12:30東俣沢出合上
 朝からスノーブリッジをくぐらなきゃいけない。心臓バクバク。大滝下の渕で33cmも含め、4匹のイワナを釣り上げる。大滝の巻は左岸。1P目は屋根状を登り始め、小さな岩壁に生えているブッシュでビレイ。25m。2P目は岩壁下を左にトラバースして、小ルンゼを横切り、岩のアレートからさらにブッシュ帯を左上し、ブッシュでビレイ。40m。3P目はブッシュ帯をほぼ直上して潅木でビレイ。25m。ここから左にトラバースし、ルンゼ対岸にある小さな潅木めがけて、ブッシュを支点に40m懸垂。さらに小さな潅木から滝上にもう1回懸垂。30m。捨てシュリ2本使用。東俣沢出合はスノーブリッジが懸かっており、また肝を冷やす。広いゴーロに幕場を見つける。周辺の山菜を取ってテンプラにして食べる。イワナは刺身、イワナ御飯、テンプラにする。ん~、うまい。しかし、釣り三昧で予備目を丸々1目使ってしまった。いかん、いかん。



 8/31 晴
   8:00東俣沢出合上~10:30二俣~13:00標高1350M付近
 出発してすぐに連爆帯に入る。二俣までに4,5回ロ一プを出す。遡行図では中俣沢の右俣が紹介されていたが、できるだけ早く稜線に抜け、柴倉沢の下降に繋げるためにより容易そうな中俣に入る。予想したとおり簡 単だが、久しく山から離れていた山本と新入部員の久保にはノーロープではちょっとキツイようで、頻繁にロープをだし、時間を食ってしまう。結局、沢の下降は諦めることとなった。稜線に抜けてしまうとこの山域では小屋泊まりを余儀なくされるので、沢の中で焚き火をしたほうがいいだろうということで、早目に行動を打ち切る。標高は1350Mくらい。滝の直下の狭いビバークサイトだった。



 9/1 晴
   8:00出発~10:00中岳の北側稜線~11:00大朝日岳~13:00竜門山~16:00日暮沢小屋~17:30根子~19:10羽前高松~20:00山形
ビバークサイト上の滝の高巻は登るに連れて傾斜が強くなり、悪い。以降も滝が連続する。口ープは出さなかったが、10mくらいの滝が連続する。詰めは草原から低潅木に変わり、20分くらい格闘した。ザックを置き、大朝日を往復して、竜門山経由で目暮沢に下る。山本がバテてしまい時間がかかったが、無事日暮沢に下る。林道を小1時間歩いて、根子に到着し、民家で電話を借りてタクシーを呼ぶ。荷物を詰めないからとジャンボタクシーにされ、羽前高松の駅まで14000円かかってしまった。山形まで出るが、日曜ということで郵便局も閉まっており、金をおろせず、居酒屋に行くも、あまり豪勢な酒盛りはできなかった。

9/2 晴
   7:12山形~18:06静岡
 乗り換えが多く、うたた寝を何度となく邪魔される帰路。寝ぼけていると電車の中で蜂に刺されて、ようやく眼が覚めた。

総括
 田丸、青木の天山遠征を横目に、これまた異色のメンバーで挑んだ今山行だったが、無事終えることができてホッとしている。沢の印象から述べると、この沢は他の朝日の沢より高巻が難しいのではないかと思う。登っても登っても斜面の傾斜がなかなか落ちてこない。久しぶりにダブルロープ2ピッチの懸垂をした。高巻の困難さとは逆に水泳はほとんど要らない。沢幅一杯に水が流れている印象がある東北の有名な沢の中にあっては、水勢が問題になることは無く、比較的小ぶりな印象を受ける。ゴルジュも小さく、滝も直登できるもので苦労するものはない。困難で有名な支流の毛無沢や西俣沢なども沢登りというよりはルンゼ登攀に近いように思われる。また、この山域は詰めになると傾斜が緩くなる沢が多いのに対し、この沢は東俣沢の連爆帯から稜線に突き上げるまでずっと急なままだ。ある意味、僕らの持っていた東北の沢の印象とは違う沢であった。雪はかなり少ない年だと、タクシーの運ちゃんが言っていた。時期も比較的遅いし、例年ならもっとスノーブリッジが懸かっていて、もっと手間取ると思っていいだろう。アブがほとんどいなかったのが有難かった。イワナについては東北の沢にあっては比較的小ぶりなのではないかと思う。個体数もそれほど多いようには思われない。まあ、あくまで朝日という山域内で比較した場合のことだ。次に山行の反省についてだが、日程が消化しきれなかったのは、釣りに時間を割きすぎたことが大きな原因だが、根本的には遡行のモチベーションの中に「遊び」の感覚を非常に強く持って行った沢登りであり、そのことが今回の遡行の全てを支配し、行程未消化の原因を様々に作り出している。これは多分にいつもの固定メンバーではなく、新人ないし久しぶりの参加という人間が含まれたために、いつもは労せず行っていた「メンバー間の共通認識」が機能しないメンバー構成だったことと、山行前に未経験の人間に対し、東北の沢の「簡単に味わえる楽しみ」の部分を強調しすぎ、東北の沢の「実際」を伝える作業を怠ったことが関わっていると考えられる。これはメンバー交代が数年の間ほとんど行われていない我が部特有の面白い問題だと思う。年1回の東北遠征に対し「やるぞ!」というモチベーションではなく「釣るぞ」とか「食うぞ」とかいうモチベーションで行ってもいいものか。ちょっと話し合いが必要かもしれない。また、今回のパーティーの遡行能力が低いということも重要な要因だ。このことにより高巻などの時間消費は工夫で解決できるレベルではなかったともいえる。これはいつでも付きまとう問題だし、ガンガン山に行くこと以上の解決法がないことをすでに知っているので、議論の対象にはならない問題だ。それにしてもよく喰った。
(文責 桜庭)