新人の初泊まり山行が八ヶ岳南部の縦走とのことだったので、増地と共に少々おじゃまして大同心の雲稜ルートに挑戦してきました。位置づけ的には北岳バットレスに向けた練習、でもフリーでのグレードはこっちの方が上だけど...?
梅雨の晴れ間に、アルパインムードあふれる快適なフリークライミングを楽しんできました。
記録:
2年生主体である初日と稜線の縦走の記録の詳細は、
こちら(クリック)をご参照下さい!
17日 晴れ
朝3時に部室に集合、良い天気とのことなので駐車場争奪戦のためのドライブ。
八ヶ岳はアプローチからすでに戦いが始まっているのです。
6:00過ぎに着いたころにはほぼ満車...!しかしなんとか八ヶ岳山荘に駐車できました。
初日は後輩たちと一緒に行者小屋まで。
大人数での山行は久しぶりですが、2年生たちが先輩として奮闘していました。
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総勢14名! 先輩がんば! |
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明日の安全を願います |
SL高林、CL奥津を中心に2年生たちが積極的に読図や休憩の指導をしていました。新人の歩行も悪くなく、明るく素直な子たちで吸収が早い!
昨年に引き続き、これまた楽しみな代です。
私たちはと言うと明日の安全をお祈りし、姿を現した大同心に心を躍らせ、泊り装備と登攀具が詰まったザックにあえいでおりました笑
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大同心はどれでしょう?(A.写真最左の岩峰) |
テントを張り終わってもまだ11時。
初泊りの新人にお留守番を頼み、上級生は阿弥陀岳へお散歩に行くことに。
明日、新人を連れて岩場を通過する前によい予行練習ができたのではないでしょうか。
テン場に戻ってもなお14時。ゼリーを作ったり(??)、飯を作ったり、トランプしたり駄弁ったり…。明日の縦走、登攀それぞれに思いを馳せながら、思い思いに暗くなるまでのんびりし、テン泊を堪能しました。
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鍋ゼリー2L! |
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日が暮れる。明日はいよいよそれぞれの本番。 |
18日 晴れ
われわれは3時に起床。落石が怖いルートのため、1番乗りを目指し手早く移動します。
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豪勢なマルタイ棒ラーメン
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食事を作っている最中の後輩達にあいさつし、4時に出発。
赤岳鉱泉で荷物を整理し、登攀具と縦走の装備のみを持っていよいよ大同心へアプローチします。
増地のナイスルーファイで5時半前には取り付きへ。
踏み跡は明瞭でしたが、急登なので体力は大事ですね。
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ロープをくぐって、いざ |
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見えてきました。でっっっっっかい!!
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沢から尾根の北側に回り込み、その尾根に乗ってそのまま進むといよいよ目の前に大同心が!
巨大で、威圧感がすごい!
まだ新人の頃、はじめて大同心を見たときに、あそこを登ることができるらしいと先輩に聞いたときは人間業じゃないと思ってましたが...。いつの間にか自分もやっているとは不思議なものです。
どうやら1番乗りに成功したようで、大休止をを取りつつ装備の準備とルートの確認を行います。(スケールが大きくてよく分かりませんでしたが笑)
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トラバースして、 |
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取り付きへ。 |
取り付きから見上げると、薄被りだけどけど楽しそう。気温も涼しく、登りやすそうでした。
リードの順番は1, 3, 5p蓮容で、2, 4p増地。いつもおいしいところを譲ってもらって申し訳ないけど、ありがたく登らさせていただきます。
以下、登攀記録
全体にボルトやハーケンが多く、クイックドロー10以上+アルヌンを使用。
登攀自体は難しくはないが、中間支点は落ちてはいけない雰囲気のものも多い。
(スポーツルートではないので落ちてはならないのは当然だが)
ハーケンの劣化だけでなく、緩んでそうなハンガーも多数あった。
1p目 蓮容
薄被りのフェースクライミング。
1ピン目が遠いので、最初のフレークにカムをセットして登り始めた。一ヵ所小ハング(?)っぽい核心があるが、ガバなので気持ちよく越える。
はじめて触る岩質であり、コンクリートを登っているようだった。
ホールドの生え方がジム的で、落石にさえ気を付ければ快適で爽快なクライミング。
終了点はハンガー&リングボルトのものがあるが、そこから少し右上するときれいなハンガー2本ものがあり、そこでピッチを切った。
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出だしにカム。上に行くとボルト、残置ともに豊富であった。 |
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終了点から。増地を探せ! |
赤岳への稜線に大人数のパーティが小さく見えた。新人たちであろうか。思いを馳せつつ増地を引き上げて、次のピッチへ。
2p目 増地
はじめは直上し、左へ。ツルツルの溝の中を登る。リードの増地はそこの越え方でしばらく悩んでいたが、よく観察していよいよトライ。右のカンテ状をうまく使ってムーブを起こし、連打してある残置に頼らずきれいに越える。ダブルロープも屈曲なく、いい感じに振り分けてあった。
前回の烏帽子岩左稜線を経て、メンタル技術共に成長したようで頼もしい。
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赤ロープが通っている溝が2p目核心。 |
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2p目を終えて。増地も調子👍👍
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眼下を見ると、3パーティが待機、準備をしていた。一層落石に注意すると共に、早起きした甲斐があったねと話す。 |
のちほど、縦走組に大同心を撮った写真を見せてもらったが、私たちはシミほどにも見えなかった。。。
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ちょうどこの頃の縦走組撮影、中央奥にちっちゃく大同心(赤岳直下より) |
3p目 蓮容
3p目は草付きを右上、落ちそうな岩の上あたりでピッチを切った。
このピッチだけ支点が少なく、岩質も異なって浮石だらけ。前2ピッチのように登ると事故に繋がりかねないため、丁寧に登る。岩が動かないかのチェックは必要だが、カムがあるとランナウトは少なくなるかも。
沢登りを思い出すような独特な緊張感を含め、個人的には非常に楽しいピッチであった。
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いまにも落ちそう?
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怪異、触手男
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3p目終了点で小休止。このあたりからかなり温かくなってきた。
4p目 増地
再び岩質はジム的に。トラバース主体の45~50m ほどのピッチ。
始めは一段上がって岩角を直上、そこからトラバース。バンドは非常に明瞭。
右側のロープはトラバース後から使い始めたが、それによりたるみが大きくなりすぎてしまい岩角にひっかかりそうでヒヤヒヤした。トラバースではロープの流れも大事だが、そのような視点も大事だという知見が得られたので覚えておきたい。また、今回は声が聞こえたが、強風時はなんらかの伝達手段を考えておいた方がよさそうな感じ。
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岩角を上がってからトラバース。 |
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なんか奥にいる |
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かの有名(?)な |
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ご満悦ッ! |
高度感があり、最高のロケーションでのトラバースであった。一つ一つ、どのピッチもおもしろい。ここまで二人ともOS,ノーテンで登ってこられた。最終ピッチには、一層気合が入る。
5p目 蓮容(最終)
いよいよ最終ピッチに取り掛かる。下から見るとなかなかに被っており、気合を入れて登り始める。
はじめは左上し、小ハングを越える。続いて核心に取り掛かるが、よいホールドが見当たらない!ここでバランスを崩すも、カチポッケにデッドしなんとか耐える。ボルダリングの成果ですかね。
クライムダウンし、ガバでレスト。観察すると右手奥にガバっぽい部分。なんとかかんとか体を右へ。ガバを掴んで体を上げるとうまいことホールドが繋がっていた。
その後は簡単で気持ちのいいクライミング。手を休めてから一気に終了点へ!無事、OSフリーでの突破となった。
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最終ピッチ、無事完了!
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増地を探せⅡ |
終了点は3点から取り、増地をビレイし始める。
増地は核心をデッドで取りにいったらしい笑。自身のことを臆病などとよく言えたものだ。
フォローがちょうど核心を越えて小テラス状の所にたった所で、奥ノ院を見ると...
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真ん中のピークの毛のようなのです |
山頂に小さく大集団が!後輩たちに違いないとコールを飛ばすと、歓声と拍手が返ってきた。(大変気分がよかったです笑笑)
コールを返してくれなかったのは不満であったが、山頂は人が多く恥ずかしかったらしい。
手を振りあい、登攀の残りを終わらせる。終了点にてグータッチを交わし、頭へ向かう。二人とも普段からゆるゆるなので、偶には山ヤっぽい部分を見せられてよかった。
大同心の頭で靴を履き替えロープを仕舞って登攀を終了。
明瞭な踏み跡を辿り本隊との合流を目指した。
登攀記録終了
大同心を背に、本隊への合流を急ぎました。
硫黄岳山荘で追いつき、あとは共に硫黄岳へ。
2年生も全員が先輩として奮闘していたようで、頼もしい限りです。
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団子標識は捕食ッ! |
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是非、経験を積み重ねて挑戦して下さい。 |
赤岳鉱泉で荷物を回収。
1年女子、松田のまさかの爆速下山に嬉しい悲鳴をあげつつ帰還しました。
まとめ:
まず、登攀自体が非常に楽しかった。ここまで時間はかかってしまいましたが、記録中でも述べたように山登りを始めたばかりの頃は想像がつかなかったようなことが出来るようになっているというのは幸せなことです。
また、北岳バットレスを前にして、かつて憧れた大同心を増地と共に挑戦できてとても嬉しかったです。クライミングとしての難易度自体は優しいものですが、山の面白さはやはりグレードだけじゃないなと色んな意味で感じます。梅雨なのに天気も申し分なく、その上ピークもいくつか取り、非常に贅沢な時間を味わいました。結果も二人とも全ピッチOS、大きなトラブルもなく、充実し成長を感じるクライミングだったと思います。特に増地がロープワークとクライミング共に落ち着いてうまくこなしており、頼れるパートナーになってくれたなあと感慨深い山行でした。
また、後輩たちの前で実際にこのような活動を見せることができたのは、山岳部の活動において可能な遊び幅の広さを実感してもらう点で、良い刺激となったようです。昨日隣で飯食ってたアホそうな先輩にもできるのだから、自分たちにもいつかはできそうだなと思ってもらえたら幸いです。
今の後輩たちは山へのモチベーションが高く、今後が楽しみです。彼らにはできるだけのことをしてやりたい、そのためには私自身も成長しなければ、と思わせてくれるメンバーには感謝しなければなりませんね。
(文:蓮容)