2018年9月28日金曜日

2018年8月13~19日 赤木沢遡行~黒部五郎~槍ヶ岳 (夏季合宿 高田班)

日時:2018年8月13日(月)~8月19日(日)

メンバー:CL高田,SL市川,大和田(食料L),中川(装備),中嶌(会計L,食料),寺野(装備L)

行程:
13日:静岡駅(9:21)=豊橋駅=岐阜駅=高山駅=富山駅(21:01)
14日:富山駅(5:30)=折立(7:45~8:05)-太郎平小屋(11:10~11:15)-薬師峠キャンプ場(11:40)
15日:薬師峠キャンプ場(3:15)-太郎平小屋(3:35~4:00)-薬師沢小屋(5:55~6:15)-赤木沢出合(8:18)-大滝(10:25~10:48高巻き込)-赤木岳・黒部五郎間稜線(12:48)-黒部五郎小屋(16:45)
16日:停滞
17日:黒部五郎小屋(5:00)-三俣蓮華岳(6:50~7:05)-(双六岳巻道経由)-双六小屋(9:06~9:20)-槍ヶ岳山荘(13:50~15:00)-槍ヶ岳(15:30~15:45)-槍ヶ岳山荘
18日:槍ヶ岳山荘(5:12)-徳澤ロッヂ(9:40~10:30)-河童橋(11:46)-松本(18:15)
19日:松本(7:12)=甲府駅=富士=静岡駅(13:11)

記録:
今年は1年生が10人入部と異例の多さであった。
その一方、上級生は教採・院試と動ける者が少なく、
杉山と2人で後輩を見ざるをえない状況だった。
それ故に1年生1人1人のレベル把握が難しく、最終目標(冬季・春季)を設けず、「基礎固め」に勤しむという方針を決め今年度がスタートした。

夏合宿は杉山とそれぞれ別の課題を設定し、
2パーティーに分かれて行うこととなった。

4月からこれまで、全ての合宿で計画を完遂していた。パーティーのレベルが高かったというより、課題自体易しいものであったからだと思う。山の楽しさ面を強調するあまり易しい課題設定になっていたと思う。最終目標が無いことも影響していたと思う。
私は1年生にとって少し厳しい夏合宿の課題を設定することにした。
1年生の技術レベルで行ける最大限で…
バリエーションもあり…
この欲張りな要望にあったのがこのルートだった。
槍ヶ岳山頂にて
計画を策定した者(リーダー)がルートについて一番調べ、
よく知っていることは勿論である。
パーティー全体の安全を考えた時、このリーダーと他メンバーのルート理解度の解離をなるべく縮めることが必要である。
1人1人が主体的な登山者にならねばならない。
今合宿では私以外、1年生ということもあり、準備の段階で全員でルート分析、情報共有する時間を作った。
静岡駅!いよいよ


乗換の豊橋駅で腹ごしらえ 中嶌
13日:晴れ時々曇り
静岡駅に集合し、この日はひたすら青春18切符の電車旅。
豊橋、岐阜、高山、猪谷の4駅で乗換、計12時間。静岡から富山は遠い。
ようやく富山駅に着き、駅前のファミレスで合宿成功を祈願し、たらふく食う。
駅に戻ると、東大スキー山岳部に遭遇。彼らは夏合宿が終わり、これから帰るところであるという。お疲れ様です。
毎度ご用達のステビバスポットで終電終了後の23時過ぎ就寝。

14日:晴れ時々雨
朝起きると、新たに大学山岳部orWV部と思しきパーティーがステビバしていた。昨晩遅くに着いたのだろう。
まだ休んでいる様子だったので、静かに準備しバス乗り場へ。
折立までのバスは満員で出発。折立までの約2時間再び夢の中へ…

折立に着いたのち、トイレ・体操・体調確認を行い出発。
この日の富山の予想最高気温は37度と高く、午後帯の天気急変が心配される。 
合宿初日で余裕の1年生


太郎平小屋前で突然の雨
太郎平小屋に着き休憩しようとした矢先、雨に降られる。
テン場まであと少しだっただけに残念。
テン場はお盆中とあり混雑。
テン場に着いてからも雨が止んで陽が射したと思えば、
雨が降り、止んでは…の繰り返し。
夕飯は味噌煮込み鍋。
初日であるからと油断し持ってきた(一応冷凍)生の豚肉から卵の香りがし、色も変色しており、絶対にヤヴァイ。
中嶌がひとかけらだけ煮込んで食べてみると
「全然いけますよ、これ!」
いやいや、中嶌の舌が鈍感なのだろうと疑いながら食べてみる。なるほど。臭いも味も普通の豚肉と変わらない。
結局、ゴミに成功ず全て食べることができた
食事後、改めて翌日の行動指針を細かく打ち合わせし、17時半に就寝。
薬師峠キャンプ場


味噌鍋~
15日:晴れのち雨
2時15分に起床する。満天の星空で天気はよい。
全員が迅速に行動し、予定より15分早く出発。
龍谷大山岳部は更に5分前に出発していった。
太郎平小屋までの木道


夜が明けてきた
太郎平小屋から先は数日間、電波圏外エリアの為、携帯から定期連絡をする。
薬師沢小屋までの木道で寺野が繰り返し滑ったため指導。
大した事ない場所でも滑って、それが癖になるのは非常に危険だ。
薬師沢小屋より黒部川本流


薬師沢小屋にて
薬師沢小屋には予定の6時より少し早く着くことができた。
薬師沢小屋で沢装備にチェンジ。
(カッパ、沢靴、ハーネス、ヘルメット装着)
トイレは小屋内にしか無いので注意。
小屋前デッキ脇の梯子から降りると黒部川本流に降り立ち遡行スタート。
黒部川本流の渓相


渡渉中


この天気がいつまで持つか…


へつる中川


沢特有の読図のコツを確認しながら進んでいく。
赤木沢出合少し下流の岩魚止ノ滝を左岸から巻く。巻き道はまるで登山道。
滝下流部は深く掘られ、底の見えない深緑をしており、恐ろしかった。
岩魚止ノ滝方向を下流から写す


巻き道


赤木沢出合で
写真奥が黒部川本流、中央右手を行くと赤木沢


!?


沢変態 中嶌でした
赤木沢出合から赤木沢に進入するところは胸あたりまで浸かる。水量が多いと難しそう。
身体が多少温まってきたとはいえ、ここは北アルプスの沢。一気に冷えます。
ここまで何度も水に浸かって泳いでいる中嶌はかなりクレイジー。

陰気味になっている黒部川本流と変わり、南面の赤木沢に入ると明るい!
大滝と1つの滝を除いて直登でき、天気も良く、ひたすら癒される。








一回目の巻き




夏ーって景色


赤木沢 大滝


大滝の釜に入浴 中嶌


大滝 巻き道


巻き中
大滝は滝の水の流れというよりも岩壁の迫力がなかなかでかっこいい。
登るとしたら…ラインを1年生と考えたが完全なシャワークライミングかな?

少し戻って大滝を巻きます。巻き道はっきり。傾斜が結構ある。
ヌメッていたり、ステップが無かったり、草付きが薄いようであれば間違いなくロープを出すだろう。
今回はゆっくり慎重になりながらもロープは出さず登った。

大滝を超えると水量は減っていく。
赤木沢の詰めは赤木岳や赤木岳より北ノ俣岳側に詰める記録が多いが、進路が黒部五郎ということもあり、中俣乗越を目指した。
標高約2300mで水が無くなり、笹原とハイマツの藪漕ぎに。
この辺りから中川のペースが落ちる。
背丈以上に高いハイマツに元気な1年生達も苦しめられる。
北ノ俣岳側の詰めに比べハイマツが煩いような感じだ。
結局、中俣乗越より約100m東側の登山道に詰めあがった。
藪漕ぎに苦しめられ、ラスト標高差180mに1時間近くかかった。
登山道に出て少しすると雨が降ってきた。
巻き中 大滝を横から


赤木沢の詰め


近いようで遠い稜線


ハイマツの藪こぎ
雨はそれほど強くないが、風が体感風速5m程度吹き始めた。
雨か風がこれ以上強くなるようだったら、風下の黒部川側にテントを張りビバークすることを考えた。
中川のペースが相変わらず上がらないので荷物を高田が持つ。
そのような状況であったが、大和田と中嶌が明るく話をしていた。
雨やガスなど気分の上がらないコンディションは山には付きものだ。
そんな時であっても明るくポジティブな雰囲気を作り出し、維持することはとても重要である。私は合宿成功の成否に関わる重要要素であると考えている。

黒部五郎の稜線を超え、カールの中に入ると風はほとんどなくなり一安心。
ずぶ濡れで黒部五郎のテン場に着き、テントを張っていると強雨が。テントに飛び込む。
乾いた服に着替えると最高!
翌日は寒冷前線通過の予定で停滞が決まっているので、
ゆっくり夕飯をとり、中嶌の怖い話と物まねを見るなりして眠る。
井上陽水の物まね by中嶌
16日:雨
明け方3時ごろ大風でテントが変形しているのに気づき修理。
その後再びシュラフに潜り、8時過ぎまで惰眠を貪った。
1年生にとっては初の停滞。
行動食を貪りながらひたすら駄弁ったり、トランプをしたり、
ホットケーキを焼いたりして過ごした。
1日中風と雨が強かった。

17日:晴れ
朝シュラフから出るのが嫌なほど寒い。女子陣は寒くて起きたと言う。
「俺、寒さ耐性落ちたな~」とも思ったが、
この日、穂高の南岳では今季初の氷点下を記録したことを後で知った。寒い訳だ。
黒部五郎 モルゲンロート


今合宿1のお天気




三俣蓮華岳までの北斜面に雪渓が残ってました
この日の朝食はコック市川による"市川飯"。
大和田を麺恐怖症に貶めたその代物が作られることは、私が主将の間は…ない。


黒部五郎に来て3日目。ようやくその山体の全貌を拝む。好きです。
三俣蓮華岳に行く途中、斜面に雪渓が残っていた。
雪渓から吹き上げてくる風は冷たい。そんな中、大和田と中嶌は半袖。
やっと見えた槍


三俣蓮華岳


双六岳への登り
三俣蓮華岳の山頂から本日の目的地、槍ヶ岳を望む。
今日は全員好調で気持ちのいい稜線歩きを満喫します。
西鎌尾根で
槍ヶ岳山荘は水有料なので双六小屋で一人約5L汲む。
西鎌尾根を歩いているときも終始槍が見えており、気分も高まる!
槍ヶ岳山荘への最後の登りを頑張ると、最高な展望の本日の宿。
テン場は残り4張しか空いておらずギリギリだった。
天気がいいので干し物をしながらのんびり休憩後、槍の穂先へ。
左から市川、大和田


中嶌




1年生の背中 槍の穂先で


足がすくんで立てない中嶌
今合宿で歩いてきた稜線を眺め20分。それ程混んでいなかったおかげでゆっくりと
景色を堪能することができた。
そして穂先で中嶌が高所恐怖症である事実が判明。
山岳部としては中々大変だが、がんばれ!(笑)

夕方になると下界の方は雲で敷き詰められ、遠くには富士山がぼんやりと見える
素晴らしい夕焼けを見ることができた。
夜中にテントから出ると満天の星空が広がっていた。
夕焼け
18日:晴れ
今日も朝は冷え込んだが、身体が順応し幾分か和らいで感じる。
準備後、日の出前に出発の予定だったがとても素晴らしい朝焼けなので、
槍ヶ岳山荘前のベンチで全員で日の出を待つ。 
太陽おはよー


女子陣 手前から中川・大和田


朝日に照る男子陣 手前から市川・中嶌・寺野
いい1日の始まりで今日もスタート。
とは言ってもあとはひたすら下るだけ。
最後まで気を抜かないよう下りの歩行を指導しつつ、徳澤まで下る。
ここで夏合宿終わり恒例のソフトクリームを食らう。
徳澤でソフトクリーム


河童橋前にて


河童橋より穂高
上高地アルペンホテルの日帰り入浴で6日間の汗と汚れを落としスッキリ。
その後、約1時間反省会を行った。この学び、反省を是非とも次に繋げてほしい。私自身も指導がきつく、涙する1年生がいたので反省。
松本城


牛角で合宿打ち上げ
この日のうちに静岡には帰れないので松本でもう一晩。
時間つぶしで石井スポーツ、松本城、明智小学校など周り、
打ち上げの焼肉を食らい、翌日静岡へ帰還。
市川がハラミしか焼かず、ハラミしか食えなかったと中嶌が不満をこぼしていたので
またみんなで焼き肉に行こう(笑)

まとめ:
"「考え」行動し、巻き込むこと"を今合宿では目標とした。
合宿中実践できただろうか?1年生はもう一度振り返ってみてほしい。
「考える」の中には、"様々な可能性を予測・想像する"ことも含まれる。
「もし○○で1人動けなくなったら…」「もし〇〇で雷雨に遭遇したら…」「もし…」…
山中でのアクシデントは付きものだ。
アクシデントを想像し、その対処方法を考えていたか、知識として持っていたか否かで、その後が変わる。
アクシデントに遭遇して初めて学ぶ。
そんな山登りの仕方に、なっていないだろうか。
そんな山登りの仕方で遭難しないのはただ運がいいだけだ。


今合宿の後、複数の1年生から聞かれたのは"逆算して考えること"が
いかに大切なことか分かったというものであった。
1年生は、言われたことはしっかりやる真面目な者ばかりだった。
その一方、なぜそうせねばならないか考えず盲目的に言われたことをやる一面がある。
何事も答えを早くに出してしまう自身の指導方法により、考える癖を奪ってしまったのだと思った。
今合宿中は、事あるごとにそれはなんでだと思う?と問いかけ、理由を考えさせるようにした。
ぜひ、そんな様々な意味において「考える」ことを実践してほしい。
(文:高田)

2018年9月11日火曜日

2018年8月11日 愛知川水系神崎川本流

日時:8月11日(土)

メンバー:CL高田,市川

行程:
11日:静岡(3:30)=国道421号線沿い池田キャンプ場付近駐車地点(7:40)-階段:入渓地点(8:25)-480m取水堰堤(8:35~8:50)-天狗滝(11:00~11:15)-ヒロ沢(11:45)-天狗滝上部より登山道出合(12:30)-左岸林道出合(13:45)-駐車地点(14:25)=静岡

記録:
山にいても暑い今年の夏!
行きたい沢リスト(消化率5%未満)の中でも特に涼めそうな滋賀県の沢に行ってきました。

今日は山の日&お盆開始ということで早朝にも関わらず、道は混み気味。
車は国道421号線沿い池田キャンプ場近くに停める。
ここから約2kmのところに「道の駅 奥永源寺渓流の里」がある。
トイレはこちらを利用できる。
神崎川左岸の林道入口ゲート

神崎川左岸林道へは鍵を持っている車両が頻繁に出入りするので、ゲート付近などへは駐車しないほうがよいだろう。
ここから沢へ降りる
今回の沢のような本流遡行では水量が気にかかる。
1年生を連れた沢登りでは尚更だ。
水量に注視して入るような沢では事前から付近河川の水量と土壌水分量、雨雲レーダーから上流集水域における局所豪雨を観察する。
そこまでしても結局は現場判断となってしまうことが多いが、こうした情報を事前に収集しておくことは撤退判断時の根拠材料になりうる。ちなみに今回の水量は少なめであったように思う。
入渓地点 巨岩ごろごろ


取水堰堤 左岸側から登る


取水堰堤の上から バックウォーターへ続くはしご


一見きれいなバックウォーター
入渓地点から少し行くと取水堰堤がある。これは左岸側から堰堤に乗り、バックウォーターへ降りる。
バックウォーターへはボッチャーンと飛び込むか梯子で降りるか選べる。バックウォーターを巻くことはできない。
ちなみにバックウォーターの水は死んでた(水に動きが無く淀み色々浮いている)
水深5mほどのこのプールを泳ぎ切ると、遡行は本格的にスタート。
いきなり長い淵


水流に抗いがんばる市川


良い笑顔


ダイナミックな渓相


途中見つけたペツルボルト



ひたすら泳がされます。下部で渡渉訓練をするのもいいかも。
白い石灰岩の沢で明るい。
大きく素晴らしい一枚岩


水は緑系の色 とても綺麗です


真ん中が天狗滝


滝の中から市川を撮る


滝の上から
ツメカリ谷、白滝谷という名渓を横目に本流をガンガン遡行していくと天狗滝。滝の裏側にはホールド・スタンスがたくさんある。
私が登った後、市川にロープを出そうと準備しているとき、
ノーロープで登ろうとしていた市川が3m程墜落。ヒヤッとしたが無傷だった。沢における登攀の考え方について指導が甘かったと反省した。

この天狗滝で引き返すパーティーも多いようだが、時間も早かったので予定通りヒロ沢出合を目指す。


天狗滝上、登山道出合


林道に上がった


林道はこの通り舗装されている


夏の空
ヒロ沢出合で引き返す。帰りは流れに身を任せ流れていきながら~
天狗滝上部の登山道出合から登山道に乗る。登山道とはいっても仕事道程度の感じ。地形図とは異なる登山道の位置に不安になりながらも、林道へ出で暑い夏空の下45分程歩けば駐車地点へ帰還。

まとめ:
泳ぎ系の沢初めての市川は沢で泳ぐことがいかに難しいか感じただろう。
夏合宿の赤木沢でSLを務める市川にとってよい経験になったと思う。何よりも楽しんでくれてよかった。
沢登りは1度に連れていける下級生の人数が少なく、育てるのが難しい。
(文:高田)