山 行 概 要
日時: 2月11日(日)~2月16日(金)
メンバー: 若月,杉山
行程:
- 11日: 沼平ゲート(10:54)→赤石ダム(14:07)→聖沢登山口(14:34)→椹島(15:35)
- 12日: 椹島(4:10)→赤石岳登山口(4:22)→2/5標識(5:57)→カンバ段(6:58)→4/5標識(10:06)→歩荷返し(10:53)→赤石小屋(14:19)
- 13日: 赤石小屋(9:40)→富士見平(11:04)→2796mピーク(12:16)→赤石小屋(13:50)
- 14日: 赤石小屋(3:28)→富士見平(4:46)→2796mピーク(5:26)→2730mコル(6:01)→2900m岩場(7:58)→小赤石岳(9:34)→赤石岳(10:05)→小赤石岳(11:00)→2900m岩場(11:50)→2730mコル(13:04)→富士見平(14:30)→赤石小屋(15:17)
- 15日: 赤石小屋(9:58)→カンバ段(12:07)→赤石岳登山口(13:41)→聖沢登山口(14:30)
- 16日: 聖沢登山口(6:10)→赤石ダム(6:26)→沼平ゲート(9:02)
記 録
杉山若月の2名で冬季に赤石岳大倉尾根に行ってきましたので報告します。
下山したタイミングで山岳部のブログにトラブルがあり、そのまま3年以上記録を書かずに放置していました。。。
が、卒業を前に悔い改めて(当時のメモを元に)記録を書こうと思いました。
1日目:2月11日(晴れ)
天気予報から2月14日が絶好のチャンスと見て、直前に入山日を一日早めることに。
果たしてこれが吉と出るか凶と出るか…
車で畑薙第一ダムへ向かう途中の、富士見峠。
ここで雪があるということは、積雪量は多いのだろう。
この後も沼平まで雪道だったので、スタットレスタイヤで良かった。
沼平ゲートからは椹島までウンザリするほど長い林道を歩く。
この日は気温が高く、雪が解けて林道は水浸し。
4時間半ひたすら歩いて、ようやく椹島の冬季小屋に到着。
小動物(ネズミ?)が走り回る音がしていたので、食料をザックの奥にしまってから就寝しました。
2日目:2月12日(雪)
ラッセルが厳しいだろうと予想し、暗いうちから歩き始める。
出来れば今日中に赤石小屋まで行きたいところだが…
最初は雪もわずかで1時間で450m、夏山ペースでガンガン登っていく。
が、2/5標識あたりから雪が増え始め、徐々にペースが落ちる。
カンバ段でワカンに切り替え、ラッセルしながら高度を稼ぐ。
積雪量はどんどん増え、4/5標識に近づいた辺りからいよいよ厳しくなってきた。
そして歩荷返し。
傾斜が急なため、雪面が顔の前まで迫る。
ピッケルで目の前の雪を崩し、膝で窪みを作り、ハイステップでワカンを蹴り込んでいく。
一歩進むのに3~4工程が必要だった。
あまりにも進まないので、自分は今日中に小屋に着くのは無理だと思ってしまった。。。
それでもノロノロと進み続け、何とか歩荷返しを突破!
小屋まであと30分標識が現れ、やっと着いたかと思ったが、それは夏山の話。
2人ともバテバテなうえ、この後もラッセルは厳しく、実際は小屋まで2時間以上かかった。
冬季開放小屋にようやく到着し、転がり込む。
一度は(少なくとも自分は)諦めかけたが、終わってみればまだ15時前。
歩けば何とかなるものだと、自分たちの頑張りをたたえた。
3日目:2月13日(雪)
この日は天気が悪いが、それは織り込み済みだ。
ゆっくり寝て、ぼちぼちとアタック日のルート偵察とトレース作りに出かける。
赤石小屋の脇を抜けていく。
自分が空荷でラッセルし、杉山が荷物を持って後ろに続く。
富士見平。ガスしか見えないが。
夏道を逸れると徐々に尾根が瘦せてくる。
しかし、ふわふわの雪のおかげか、それほど恐ろしくはない。
2769mピークから大倉尾根を眺める。(良く見えないけど)
明日はあそこを登るんだと気を引き締め、ここで偵察を終了。
小屋への帰り道は風雪にやられ、すっかり凍えてしまった。
入山前の予報では、この日の午後あたりから天気が回復すると読んでいたので、天気が大きく変わっていることを心配しながら小屋へ戻った。
小屋に帰って気象通報を取ると、事前の予報よりも高気圧が来るのが半日程度遅れていた。
それでも、もうすぐ太平洋側に高気圧が来て、明日は丸一日最高の天気になりそうだ。
予定通り明日14日に赤石岳にアタックとし、偵察にかかった時間から出発時間を午前3時半とした。
夕方トイレに行くと、すでに青空が見え始めていた。
ラジオの天気予報を聞くと、明日は穏やかに晴れて、3月中旬並みの気温になるとのことだ。
「これは行けるぞ」とそわそわしてしまい、この日はなかなか寝付けなかった。
4日目:2月14日(快晴)
朝。2時20分ころに目が覚め、起床時刻の2時半を待っていると、隣で杉山が体を起こす気配を感じた。
それなりの日数を山で過ごしてきたが、杉山が「起床時刻よりも前に」しかも「自分で」起きたことが過去に一度でもあっただろうか。
今日のアタックにかける杉山の思いを感じ、自分まで奮い立った。
暗い中準備をし、予定通り3時半に出発する。
昨日のトレースは大分薄くなっていたが、暗いときはわずかな痕跡でも心強い。
富士見平~2769mピークと偵察済みの部分は暗いうちに通過。
2730mのコルでうっすら明るくなってきた。大体予定通りだ。
ワカンからアイゼンに履き替え、大倉尾根の登りにかかる。
徐々に日が差し始めると、天気が良いのが良く分かった。
目指す赤石岳には雲一つなく、風も穏やか。
どうやら今日をアタック日にしたのは大正解だったようだ。
そして日の出。
もう少しでダイアモンド富士だった。
天候が良いうちに早く登ってしまいたいところだが…
まだまだラッセルが深く、なかなか進まない。
交代しながらラッセル。
もう少しワカンのまま歩くべきだったか?
根気よくラッセルしていくと、徐々に尾根が細くなり、雪稜らしくなってきた。
足元をパシャリ。ミスは許されません。
これは奇跡の一枚!
この辺りは雪稜が本当に見事だった。
細い尾根を右に左に通過していくと、
岩場が現れる。
この岩場が、今回の山行で2人が最も心配していた部分だ。
ここに来るまでに、この部分がそもそも登れるか? 仮に登れた場合に下降をどうするか? など度々話題になっていた。
幸い実物は思っていたより傾斜が緩いので、「ロープ無しでも…」と登り始めるが、サラサラの雪の下から岩が出てくる感じで意外に悪い。
ここはしっかりロープを使って突破。
灌木や岩で3か所程度プロテクションが取れたが、30mロープではわずかに長さが足りず、一瞬コンテになった。
自分がロープを片付ける間に、杉山に進んでもらう。
この岩場さえ越えれば、と思っていたがまだラッセルが続くようだ。
交代しながらラッセルするが、2人とも疲れていてもう長くは続かない。
小赤石岳直下でようやくクラスト。
傾斜はきついが、アイゼンの前爪が快適に刺さる。
間もなく小赤石岳に到着!
色々な不安がありながらも、大倉尾根を完登できた喜びと安堵が一気に押し寄せ、不覚にも泣きそうになってしまった。
赤石岳まではもう少し稜線を歩く。
風はあるが、歩行に支障が出る程ではない。
そして 2/14 10:05 赤石岳山頂。
自分は「やってやったぞ!」という興奮と、「今から同じルートを降りるのか…」という不安が半々くらいの複雑な心境だった。
赤石岳避難小屋の陰で休憩していると、杉山がチョコレートを一つくれた。
そういえば今日はバレンタインか…。
冬山ではわずかなカロリーも貴重なので、これはこれでありがたく頂いておいた。
登ってきた大倉尾根と杉山。
「時間はあるからとにかくゆっくり慎重に下ろう」と2人で話し、下りにかかる。
下山の方が事故が起こりやすいとよく言われるので、ここではまだ緊張していたように思う。
色々な案があったが、核心部の岩場はマルチを逆再生する要領で通過。
あまり教科書では見ないやり方なので善悪は不明だが、今回はこの方法が一番安全に思われた。
どんどん高度を下げる。天候が崩れることもなく、下りは速かった。
帰りの富士見平で大倉尾根と2人そろって記念撮影。
稜線ではカメラが飛ばされそうでできなかったので。
赤石小屋に戻り、全ての緊張から解放され、安堵の笑顔を見せる杉山。
カメラを向けられれば自分も同じような表情をしていたに違いない。
5日目:2月15日(雪→くもり)
朝は雪が降っていたので、止むのを待って、のんびりと下山開始。
途中からは薄日も差し、平和な下山となった。
食料が余っているし、早く降りても特にやることが無いので、聖平登山口でもう一泊した。
6日目:2月16日(晴れ)
林道の復路を沼平まで歩いた。
自分はなぜか帰りの方が短く感じた。
何やってんだか。お疲れさまでした。
(文:若月)
ま と め
杉山:
この山行が自分の山岳部人生の集大成となった。今振り返ってみてもかなり厳しい山行であった。このような素晴らしい山行ができ、共に登った若月はもちろん、これまで共に登山し自分を成長させてくれた山岳部メンバーに感謝である。
若月:
結果だけ見れば予定通りの登頂だが、決して楽ではなかった。自分にあれだけのラッセルを一人でこなす実力は無く、杉山に感謝である。