日時:2003年3月4日~15日
メンバー 青木睦佳(農2)、中岡稔充(OB)
3/4(火) 雪
6:10東静岡駅~13:00信濃大町14:00~14:20葛温泉~17:00高瀬ダム
電車で信濃大町に13時着、スーパーで今日の分のレーション、晩飯、 明日の朝飯を買う。また、前回に続きおぼんの代わりに雑誌も買う。タク シーは七倉まで入らず葛温泉までで、五千二百円だった。ここから歩くが、 高瀬ダムの登りが結構長く感じた。ダムではトンネルの中にテントを張り、 快適な夜を過ごす。
3/5(水) 晴れ
7:55高瀬ダム~12:20名無し小屋12:40~16:40湯俣
四時起きのつもりがいきなり寝坊。トレースは無く最初から結構なラッ セル。木道に積もった雪の上を渡るのは結構ドキドキしたが、そのうち慣 れる。名無し小屋は畳の部屋になっていて薪もあり、かなり快適そうだ。 しかしここに泊まるわけにもいかない、見るんじゃなかったと思いながら も先を急ぐ。平坦とはいえ重荷のラッセルはしんどく、湯俣に着いたとき にはかなりへばっていた。
3/6(木) 曇り
6:10湯俣~7:30硫黄尾根取付き~9:00尾根上~14:45 213mピーク手前
取付きへはつり橋を渡り、水俣川を少し登ったところ。赤布が少しある。 つり橋を渡ってから徒渉二回。靴は濡らさずにすんだ。ここから尾根へ支 尾根ではなく、ルンゼを登ったが見た目より傾斜があり、がちがちに凍っ ている部分もあり、輪かんでは厳しく何度かずり落ちそうになりながらな んとか尾根上に出る。アイゼンに変えればよかった。尾根からはひたすら ラッセルでなかなか進まない。予定より進まなかったが疲れたし、いいテ ン場があったので泊まることにする。
6:30ピーク手前~14:50硫黄居前衛峰P6~15:30小次郎のコル
今日もラッセルが深く厳しい。硫黄岳前衛峰群に入っても、岩の上にたっぷり雪が載っている。P2の頭(だと思う)では、掘っても掘っても岩は出てくるが懸垂支点が見つからない。さんざん探したが結局見つからず、ハーケンを二本打ち懸垂。三本しか持っていなかったので残り一本。まだまだ先は長いのに不安が残る。P3の下りは岩峰でいったんは懸垂したが、序盤で捨てシュリの大半を失うのは怖く、中岡さんが空荷で登り返して回収してきた。この後このシュリンゲを多用することになったので、結果的に大正解だった。P4の下りは良い支点もないし頑張ってクライムダウンしたが、雪のすぐ下は岩でなかなか悪い。もし滑落しても止まるだろうと思い、半分ぶち切れで下る。輪かんをアイゼンにすれば楽なのだろうが、すぐ深いラッセルになるのでずっと輪かんだった。P6の下りは急だが、雪がいい状態ならノーロープでいけるだろう。この時はクラストした箇所があり、適当なところに潅木があったので懸垂で降りる。降りると小次郎のコルで、ここからは北鎌と槍の姿が見えた。まだまだ遠いぜ。
3/8(土) 雪
沈殿
前の晩のラジオで冬型が強まると聞き、停滞を決め込む。結果的には動けないこともなかったが、まあ正解だっただろう。明日はさらに冬型が強まるとのことだったが、午後から晴れてきたので、明日は動くことにして就寝。
3/9(日) 晴れ
6:40小次郎のコル~12:10硫黄岳~15:30雷鳥ルンゼ直下のコル
心配していた天気はピカピカに晴れた。ちょっと拍子抜け。硫黄岳の登りもラッセルが深く、傾斜もあり遅々として進まない。硫黄岳からは雪も締まっていて、途中で輪かんをはずす。今回の山行で初めてアイゼンとな る。雷鳥ルンゼは一ピッチ懸垂した後、ロープを連結し、スタカットで下る。ロープいっぱいでルンゼを降りきり、ここから'一ピッチの登りで尾根上に戻る。ここで、千丈沢側の雪をL字に切り、テン場とする。風も当たらず快適なテン場であった。二人用テントなら、時間もかからずこの張り方はかなり良い。
3/10(月) 晴れ
6:30雷鳥ルンゼ直下のコル~7:00南峰~9:30赤岳前衛峰群P3・P4のコル~16:25P6・P7のコル
南峰の登りは雪が締まっておりサクサク進む。南峰からガレ場を降り右に曲がったところからいよいよ核心の赤岳前衛峰群だ。P1,P2は湯俣側を巻き、P3は中岡リードで登る。次のP4は登るとするとランナーもとれなく、逆層っぽくなっており難しそうだ。結局このP4をP6だと思い湯俣側から巻こうとする。しかしこれが間違いで、小さく巻こうとすると岩に阻まれてしまう。ルートを探しながら何度も行ったり来たりを繰り返し、かなり大きく巻くことになってしまった。登り返して3・4のコルに戻るしかないかもしれないと思ったが、雪崩れそうな斜面をビレーしてもらい空荷で偵察にいき、ついに凹角状の岩の切れ目を見つける。ここを登りやっと尾根上に戻ることが出来た。かなり時間がかかってしまった。P5は容易で、P6は直登しようとしたが行き詰まり、ようやく今登っているのがP6だと理解した。これを湯俣側から巻くと、ちょうどP6・P7のコルに出る。今日も雪をL字に切りテン場とする。このころから青木の足が凍傷気味で、テント内で操んだりするが、なかなか感覚が戻らなく少し不安だ。
3/11(火) 晴れ
6:40P6・P7のコル~10:30中山沢のコル
今日は北西からの風が強く、ビレーがかなり幸い。中山沢のコルまではすぐだろうと思っていたが、思いのほか難しく、ここでも少し迷いながら進む。P8の最後の登りは脆い岩を騙し騙し登る。登りきり左にトラバースしていくと懸垂支点がある。ここから4mの懸垂で中山沢のコルに降り立つ。寒さと、核心部を抜けたという安堵からか、今日はこれ以 上行動したくなくなってしまう。迷ったがここに泊まることにする。コルは風が強いし時間もあるので雪洞を掘る。二時間程で完成。ここから見る赤岳への登りは傾斜があり、なかなか難しそうだ。まだまだ気を抜けない。今日も足を暖めてもなかなか感覚が戻らない。色も白く血の気が無い。ひどくならないことを祈る。このところ寒く夜中に目が開くことがあったが今日は雪洞だしよく眠れるだろう。
3/12(水) 晴れ
8:30中山沢のコル~11:10赤岳~14:10白樺台地
テントの撤収がないので、いつもより一時間遅い五時起床とするが、入りロが完全に埋まってしまっていて掘るのに時間がかかり出発が遅くなってしまった。今日もやや風がある。コルから赤岳までスタカットで登り、赤岳主峰群も積極的にロープを出し慎重に行く。白樺台地はだだっ広い雪面で、妙にはしゃぐ。やった一!ついに抜けた一!広いためなんとなく落ち着かない。ブロックを積みテントを張る。
3/13(木) 晴れ
6:30白樺台地~7:OO西鎌尾根~10:00千丈沢乗越~11:40槍ヶ岳肩の小屋12:20~12:40頂上~13:40肩の小屋
西鎌尾根までまだ結構距離があると思われたが、クラストしておりアイゼンのつめが良く効く。すぐに西鎌尾根に出た。ここからは主に夏道沿いに行く。今日も天気は良く、朝少し風があったがすぐに止みぽかぽか陽気だ。千丈沢乗越の手前あたりから青木が高山病の症状を訴えぺ一スが落ちる。槍の肩への登りは見た目よりも長く、苦しい。ふくらはぎも疲れる。肩の小屋についても具合は悪いままだ。南岳小屋まで行く予定だったが、肩の小屋に泊まることにする。大休止の後念のためロープとシュリンゲを持って槍を往復。今日も天気が良いので頂上からの景色は素晴らしい。自分達が登ってきた硫黄尾根も全部見渡すことが出来る。今度は北鎌から来ようと思い頂上を後にする。小屋にはトイレもあり快適だ。「非常時にお使い下さい。」と書かれた缶の中にはアルファ米とククレカレーがあり、 非常時ではなかったがありがたく頂く。久しぶりに腹いっぱいで眠る。
3/14(金) 晴れ
7:30肩の小屋~9:20南岳~12:35西尾根2700m~15:40西尾根末端~16:30滝谷非難小屋~18:10白出沢小屋
五時半起床、七時半出発。二時間程で南岳に着く。西尾根は姶めただの斜面を降り、急にやせ尾根となる。傾斜も強くなるがロープを出さずに降っていくと、さらに傾斜が増し懸垂で降りたいが、支点が無い。雪を掘って探すが見つからず、スノーボラードを作り支点とする。この懸垂方法は初めてなので、強度は大丈夫か分からず緊張した。降りた感じでは締まった雪なら結構しっかりしていると思う。この尾根は途中から夏道になっていて、2700mでは看板もあった。降りるに従い雪が腐ってきて歩きにくい。デルタ状岩壁は右から懸垂しながら巻き降る。槍平に泊まっても良かったがここまできたら明日中に静岡に帰ってしまいたくなったので、滝谷非難小屋まで行くことにする。非難小屋は思ったより大きく、ゴミが少しあったが快適そうだった。ここまで来るとやはり白出沢小屋まで行ってしまおうということになった。白出沢小屋からはトレースがあるだろうと思ったがなかった。ちょっとがっかり。
3/15(土) 雪
8:30白出沢小屋~10:20新穂高温泉~高山~静岡
起きると久しぶりの雪。気が抜けてるせいか新穂高までがやけに長い。去年は入れなかった温泉に入りバスで高山へ、九時頃には静岡に着いた。
総括
冬合宿に引き続き二人きりの合宿となった。今回は天気に恵まれ、充実した山行になった。硫黄尾根はほとんど残置がなくルーファイが難しく、ラッセル、岩稜、雪稜と変化があり長い尾根ということもあり様々な要素があり非常に楽しかった。個人的には珍しく気合が入っていて、集中力が途切れなかったと思う。自分の成長も少しは感じた。しかしまだまだ難し い箇所はリードしてもらったし、ラッセル力も足らないと痛感した。凍傷にも気をつけなければならない。(帰ってから激痛だったけど大丈夫でした。)今回は初めから終わりまでトレースが無かったし人に会うことも無かったため、山に浸れた感じがした。こういう山行をまたしたいと思う。二人だったのでロープを出しやすかったが、人数が増えたときはどうしてもスピードが落ちるだろうしまた、出すタイミングも難しいと思う。しかし合宿というからにはもう少し大人数で今回のような山行をしてみたいと思う。
(文責 青木)